実は会長8割が無投票、豊富な会費収入で政治闘争 高まる若手の不満「左右でなく上下に分裂する」

弁護士会 「左傾」の要因(4)
平成29年度の弁護士会会長の選出方法。全国52の単位弁護士会のうち、立候補者が1人しかおらず、無投票で決まったのは少なくとも41単位会と8割近くに及んだ

 《「あいつをしばいたろか」「いてもうたろか」こんな何気ない大阪弁でも犯罪に?》

 共謀罪の構成要件を厳格にした「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案。大阪弁護士会のホームページにある「共謀罪 名前を変えてもレッドカード」という特設ページを開くと、不安をあおり立てるこんなコピーが記されたチラシが表示される。

 かつての安全保障関連法と同様、日本弁護士連合会(日弁連)や単位弁護士会はテロ等準備罪に組織を挙げて反対し、廃案を目指す活動に邁進(まいしん)している。

 予算編成権、会員への懲戒権を持ち、国の監督を受けない完全な自治権が保障された日弁連と単位会。国家権力と対峙(たいじ)しつつ人権を守る職務の性質上、「弁護士自治」は不可欠なのだろう。では、その下でなされる意思決定はどうなっているのか。政治闘争に走る弁護士会を支える自治の実態とは-。

まるでババ抜き

 「地方の弁護士会で、会長になりたい人なんてめったにいないのではないか」

 ここ20年来、会長選挙の無投票が続いているという小規模単位弁護士会の関係者が実情を明かした。

 本紙が全国52の単位会に聞き取ったところ、今年度に会長選への立候補者が1人しかおらず、無投票で決まったのは少なくとも41単位会と8割近くに及んだ。立候補者がゼロだったため推薦で選出したところも3単位会ある。選挙をしたのは第一東京、大分の2単位会のみ。ほかに4単位会が総会での無記名選出方式などで会長を選出した。山梨、島根両県の単位会は「取材には応じられない」として回答を拒否した。

 単位会の会長はたいてい日弁連理事を兼務し、議決機関の理事会を構成する。日弁連の会則では「運営に関する重要事項」はすべて理事会で審議する。重責を担う理事の大多数が無投票で決まっているのだ。

 大阪のような大規模単位会では会派(派閥)間の調整が行われ、有力会派のメンバーが持ち回りで会長を担う慣習がある。役員報酬もあり、なりたい人は多いだろうが、めったに選挙戦にはならない。一方、無報酬でなり手不足の地方では様相が異なる。九州のある単位会の現役役員は「やりたくないが、順繰りでやるしかない」と“ババ抜き”のような実情を吐露した。

 別の単位会は「会長になると年収が激減する」と、エリアごとに輪番のような形で代表を選出。他にも「暗に弁護士会の入会順でなんとなく」「前年度の副会長が自動昇格する習わし」という驚くべき証言もある。

繰越金100億円超

 組織運営に欠かせない資金はどうなっているのか。

 日弁連は全国の会員から毎月、会費として1万6800円(5月現在)を徴収している。収入の大半を占める会費収入は、近年の弁護士大増員を受けて拡大の一途だ。

 大阪弁護士会の調査によると、日弁連では平成25年度末時点で基金や特別会計をあわせて計107億5874万円の繰越金があったほど。「会費を過剰に徴収しているのでは」と内部からも批判の声が上がる。

 潤沢な資金は何に使われているのか。27年度の事業費支出で大きいものは、人権大会費3719万円▽広報宣伝費7031万円▽会誌「自由と正義」出版費9040万円-などだった。27年度は日弁連が大々的に反安保法キャンペーンを展開した年だが、実は会員向け決算書にも詳細な内訳は書かれていない。

 「会員が支出内容をチェックできないので、理事者の裁量が過大になっている」と指摘するのは大阪弁護士会の土谷喜輝(47)だ。同会の財務委員として会費減額を訴える意見書を作成し、日弁連に送ったこともある。「企業ではないので黒字が増え続ける必要はない。それは会費の取りすぎということだ」

 必ずしも選挙で信任を得たわけではない執行部の面々が、豊富な会費を原資に政治闘争を続ける。そんな弁護士自治は、もはや「砂上の楼閣」ではないだろうか。(敬称略)

 【用語解説】弁護士会費

 弁護士が毎月、日弁連と所属する単位弁護士会にそれぞれ支払う。5月現在の日弁連会費は月額1万6800円。各単位会費と合わせた一般的な弁護士の負担額は、年ベースで42万2400~102万2400円と各地で開きがある(平成23年の日弁連調査による)。弁護士自治を支える日弁連と単位会の収入の大半は会員からの会費で、6カ月以上滞納すると懲戒処分の対象となる。