「反改憲」が日弁連会長選の公約トップ 「左派色最も強い」会派がサポート…「ウルトラ保守」政治家への献金で波乱

弁護士会 「左傾」の要因(1)
日弁連会長は事実上、「会派」と呼ばれる〝派閥〟の動きで決まる。現会長の中本和洋氏への支援で中心的役割を果たしたのは、大阪弁護士会で「左派色が最も強い」とされる会派「春秋会」。中本氏は当選直後の記者会見で「反改憲」を打ち出した―

 「人権侵害につながるような憲法改正には反対しなければならない」。昨年2月、日本弁護士連合会(日弁連)の会長に選出された中本和洋(70)が最初の記者会見で打ち出したのは、「反改憲」だった。

 2年に1度行われる日弁連会長選。法曹養成制度のあり方をめぐり、現執行部の路線を継承する元大阪弁護士会会長の中本と、執行部に批判的な高山俊吉(76)の一騎打ちとなった選挙は、中本が現選挙制度下で最多の1万2303票を集め、4927票の高山を引き離した。ただ、投票率は47・21%。過去最低だった前回46・65%をわずかに上回ったが、半数以上の会員が「無関心」という実態が浮かんだ。

 《憲法前文と9条が規定する徹底した恒久平和主義は、これからも守っていかなければなりません》《安全保障法制は憲法違反であり、廃止に向けて取り組みます》…。中本は選挙公報でも冒頭に「平和を守る」と掲げ、改憲を目指す安倍晋三政権への対決姿勢を鮮明にした。

 実は投開票前、自民党政調会長だった稲田朋美(58)の後援会に中本が政治献金をしていたことが判明した。候補者が各地で政策を訴える公聴会で、中本の見解をただす声が相次いだ。「稲田さんは改憲志向のウルトラ保守。対立候補の攻撃材料になってしまった」。中本陣営関係者は振り返る。

 中本は自身のホームページで弁護士でもある稲田と旧知の間柄であることを強調した。《弁護士の立場を守る議員は与野党を問わず応援するが、個別の政見は是々非々で対応する》。つまり、献金していても、稲田の改憲論に共鳴しているわけではない、と釈明しなければならなかった。

憲法…選挙の帰趨決める要因

 大企業の顧問弁護士を務め、民事司法改革に強い関心を向ける中本が、公約のトップに「平和」を掲げ、稲田献金の火消しに追われたのは、憲法への姿勢が会長選の帰趨(きすう)を決める重要な要因だったことを物語る。その背景には、大きな単位弁護士会内にある「会派」と呼ばれる〝派閥〟の存在がある。

 日弁連会長は一部を除き、東京の3弁護士会と大阪弁護士会の会長経験者が選出されてきた。この4単位会内にある会派の数は4~8。最大の会員数を誇る東京弁護士会には会派内会派まで存在する。会派への入会率や所属人数はまちまちだが、主要会派がまとまって統一候補を立て、反執行部系の対立候補を破る-。会長選が繰り返してきた流れは、中本の選挙でも同じだった。

 中本を代表に据えた「希望と活力にあふれる司法を創る会」大阪本部には、大阪弁護士会に7つある会派が結集。特別顧問や代表世話人に元日弁連会長・同会会長が名を連ね、主要会派が政策を練り上げた。昨年2月の会長選の半年前には政策集を完成させ、秋以降も東京などで集会を重ねて中本を支えた。

 会派はもともと、日弁連会長選や単位会幹部人事への影響力確保を目的に結成されたものだ。会派の中核を担う弁護士は単位会や日弁連の執行部を形成していく。関係者の証言では、弁護士会会務に熱心な会員は「左派」が多く、彼らが執行部の主導権を握る構造になりやすいのだ-という。

「あまり右に行かぬよう」

 中本は大阪弁護士会の7会派のうち、大企業の顧問弁護士が多いとされる「一水会」に所属するが、別会派の「春秋会」が選挙戦を強力にサポートした。

 春秋会は共産党系弁護士が多く所属。7会派で「左派色が最も強い」(ベテラン弁護士)会派だ。複数の日弁連会長を輩出し、人権擁護や消費者問題など日弁連で活動的な委員会の委員を務める会員が「圧倒的に多い」(関係者)。

 元大阪弁護士会長の一人は「選挙戦で最も動いてくれるのが春秋会だ」と語る。その理由として、共産党は全国に党の組織があるとした上で「各地の共産党系弁護士は選挙で熱心に動く人が多い。どこの弁護士会にも連絡できて、集会に人を集められる」と説明する。

 過去の日弁連会長選で影響力を行使してきた春秋会は今回も、「平和問題にうとい」と一部で反発があった中本への支持を固める中心的役割を果たした。

 春秋会関係者は「平和問題を公約のトップにしないと選挙は戦えなかった」と振り返り、こう吐露した。

 「春秋会が日弁連執行部の政策に関与していくためにも、選挙に力を入れた。私はお目付け役だったのかな。『右に行かないように引っ張れ』と」(敬称略)

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 さまざまな思想、信条を持つ弁護士が登録する強制加入団体であるにもかかわらず、安全保障関連法への反対など政治闘争に走る日弁連。なぜ、左傾的偏向がまかり通るのか。組織にひそむ要因や問題点を考える。

 【用語解説】日弁連会長選挙

 2年に1度、2月に実施する。公示の10日前時点で弁護士名簿に記載された会員が投票権を持つ。公示から投票日は30日間で、不在者投票も可能。当選するには「得票数が最多」「3分の1超の弁護士会で最多得票を獲得」との条件を満たす必要がある。一部の例外を除き、会員数が多い東京の3弁護士会と大阪弁護士会の会長経験者が立候補し、主要会派(派閥)をまとめて当選するケースが多い。