政治集団化する日弁連「安倍政権、声を大にして糾弾」…反安保で振り回した「赤い旗」

弁護士会 政治闘争(1)
集団的自衛権の限定行使を柱とする安全保障関連法案の成立前、村越進会長(中央、当時)を先頭に「安保法案は憲法違反です」との横断幕を掲げて国会周辺をデモ行進した日本弁護士連合会。すさまじい熱量の反対運動を展開した=平成27年8月26日

 「安保法制は憲法違反であり、無効。総力を結集し、未来の世代のために反対しよう」

 「安倍政権、とんでもない。声を大にして糾弾する。労働者人民と手を組んで打倒すべきだ」

 平成28年10月、福井市内で開かれた日本弁護士連合会(日弁連)の人権擁護大会。集団的自衛権の限定行使を柱とする安全保障関連法に反対する執行部提案の大会宣言案について、同調する弁護士らが次々とマイクを握り、安倍晋三政権批判を繰り広げた。

「安保法案は憲法違反」

 戦後間もない昭和24年、すべての弁護士を統括する全国規模の組織として、弁護士法に基づき設立された日弁連。監督官庁がなく、各地の単位弁護士会や弁護士らの指導・監督を目的とする法人だ。そんな弁護士の〝総本山〟が、特定秘密保護法とそれに続く安保法制の制定過程で、「憲法違反」としてすさまじい熱量の反対運動を展開した。

 大会の前日に開かれた日弁連のシンポジウムで、実行委員会がまとめた報告書(第1分科会基調報告書)によると、安保法制と集団的自衛権、秘密保護法に関連する日弁連の意見表明(宣言、決議、意見書など)の件数は、平成28年8月末現在で39件に上っていた。新法制定を提言したものを除けば、大半が反対・廃止を訴えるものだった。

 単位弁護士会も軒並み反対をアピール。関東や近畿など各ブロックの弁護士会連合会と合わせた意見表明件数は、25年以降で約570件に達する。うち確認できた548件は、集団的自衛権の政府解釈変更や立法を批判する内容だった。

 安保法案が国会審議中の27年7月24日には、朝日、読売両新聞に意見広告も出している。

 平和を維持し、戦争を抑止するための安保法案に「憲法9条に反する」「戦争を招き寄せる」と激しく反対し、廃止法案まで提出した民主党(当時)や共産党などの野党と軌を一にする意見。日弁連の一連の動きは、だれの目にも「政治闘争」と映るものだった。

「強制加入団体なのに…」

 弁護士法8条は「弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならない」と規定している。日弁連が「強制加入団体」といわれるゆえんだ。

 安保法案への賛否を含めて、さまざまな思想・信条を持つ会員を強いて一つの器におさめる団体が、自ら厳正中立の姿勢を捨て、一方的な「政治的意見」を叫んでいいのか。

 一連の司法改革で弁護士人口は増加し、いまや3万9015人(3月1日現在)と過去20年で約2・5倍に跳ね上がっている。

 「日弁連は強制加入制の法律団体ではあるが、立憲主義の破壊だけは認めることができない。その一点で一致し、安保法案に反対している」。法案成立間際の27年8月26日、記者会見に臨んだ当時の日弁連会長、村越進(66)は「政治闘争」批判を意識してか、あくまで「憲法論に立った行動」と強調した。

 先の第1分科会基調報告書は、政治から距離を置くべきだとの指摘があることに言及しながら「立憲主義を無視するような場合」には「果敢に行動することが求められている」とした。

 同じ報告書は「ナチズムは、その独裁を正当化するために、しばしば『民意』を援用した」「今後自衛隊は、その局面に備えた武器使用基準や部隊行動基準に則って、人を殺し、他国を破壊する訓練を行い、さらには実戦に臨むことになる」とも書いている。

 彼らは今の日本にヒトラーの影を見て、軍靴の足音を聞いているのだ。

元日弁連副会長も批判

 集団的自衛権の限定行使容認を自民党内でリードしたのは、副総裁で弁護士出身の高村正彦(75)とされる。高村が在籍する山口県の法律事務所代表で、日弁連副会長も務めた末永汎本(ひろもと)(77)は「それこそ十何年も前から高村は限定行使を考えていたようだ」と話し、「集団的自衛権を保有するが行使できない」としてきた憲法解釈を高村が突破したことを評価した上で、日弁連が今やるべきなのはそんな議論ではないと嘆いた。

 「会員も増え、それぞれの経済的基盤が非常に弱くなっている。『赤い旗』を振り回している場合じゃない」(敬称略)

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 わが国の法曹界で大部分を占める弁護士の胸に輝く記章(バッジ)は、外側に自由と正義を表す向日葵(ひまわり)、中央に公正と平等を意味する天秤(てんびん)がデザインされている。自由と公正の守護者であるべき弁護士会はしかし、公然と「政治闘争」を繰り広げている。内部からですら疑問が出る左傾的闘争体質の根には何があるのか。戦後70年を超えた今、考えたい。 =(2)に続く

 【用語解説】日弁連 弁護士法に基づき設立され、各地にある52の単位弁護士会や弁護士らの指導・監督など完全な自治権を持つ法人。強制加入団体で、単位会を通じて日弁連の弁護士名簿に登録されなければ法律業務ができない。会員の資格審査に加え、組織・運営の会則を定めるほか、単位会とともに会員への懲戒権を有する。役員は会員の直接選挙で選ぶ会長(任期2年)、副会長(同1年)、理事(同1年)など。

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