英空軍がやってきた 最新戦闘機「タイフーン」、日米欧機の“本気”バトルも

軍事ワールド
英空軍のタイフーン戦闘機。限定的ながら、レーダーに映らないステルス性を持っている。スエーデンのサーブ・グリペンやフランスのラファール、ミラージュなどとともに欧州の空を守る代表的な戦闘機だ(英空軍ツイッターより)

 英国空軍(RAF)の最新戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」が10月17日から11月6日にかけて航空自衛隊との共同訓練のため来日。空自のF-15イーグル戦闘機やF-2戦闘機と異機種空中戦訓練(DACT)などを行った。英空軍の戦闘機が共同訓練で日本の空を飛ぶのは初めて。空自の戦闘機が二国間の共同訓練を行うのは、米国に次いで2カ国目で、中国の海洋進出や北朝鮮の核開発などでアジアの緊張が高まる中、英国のプレゼンス(存在感)を示した。(岡田敏彦)

輝ける「2」

 英国からやってきたのは英国空軍第2スコードロン(sqn)のタイフーン4機とボイジャー空中給油輸送機、C-17輸送機と人員約200人。演習先のマレーシアを出発し、10月22日に航空自衛隊三沢基地に着陸した。

 主役の第2sqnは1912年創立という英国空軍の伝統を背負う部隊。多くの英空軍sqnがラテン語のモットーを持つなか、第2sqnは陸軍とのコーポレーションを示す「AC」をモットーとしている。ニックネームは「シャイニー2」(輝ける2)だ。

 最新のタイフーン戦闘機が配備されたのは2015年。1912年のブリストル・ボックスカイトに始まり、第二次大戦中はトマホークやマスタング、スピットファイアを装備。戦後はファントムFGR2やジャギュア、トーネードと配備機は多岐にわたる。

 一方の航空自衛隊からは、三沢基地を本拠とする第3飛行隊のF-2と、北海道の千歳基地を本拠とする第2航空団のF-15が約4機ずつ参加した。

ドッグファイトも

 タイフーンは英国と旧西ドイツ、イタリア、スペインの4カ国が共同開発した戦闘機で、正確には戦闘機ながら攻撃機の役割も果たせる「マルチロール機」として1990年代に本格的な開発が始まった。電波吸収材を多用しており、レーダーに映らないステルス機のF-22ラプターなどには及ばないものの、優れたステルス機能をもち、音速で巡航できる(スーパークルーズ)など、4・5世代型の戦闘機とされている。

 英仏共同開発の戦闘攻撃機「ジャギュア」と、垂直離着陸できる攻撃機「ハリアー」の後継機として開発され、制空戦闘機としての機動力を重視する一方、戦闘攻撃機としての地上攻撃能力も考慮して開発された。米空軍でいえば、F-15をマルチロール(多用途)化した「ストライクイーグル」のような存在だ。

 一方の日本は、空中戦では定評のある米国製F-15と、奇才ジョン・ボイドのエネルギー・マニューバ理論の申し子ともいえる「最強の制空戦闘機」のF-16の性能をさらに高めた「平成のゼロ戦」のあだ名を持つF-2が訓練に参加した。

 航空自衛隊の航空幕僚監部広報室によると、実際の訓練は太平洋上と日本海上の訓練空域で、3つのパートにわけて行われた。

 まずひとつは防空戦闘訓練で、青チームと赤チームに別れ、広い空域で双方が対戦する。レーダー誘導のミサイルによる攻撃訓練なども含まれ、肉眼で見える距離をはるかに超えた遠方の“敵”と、つまりレーダースコープ上の敵と戦う訓練ともいえる。

 もうひとつは対戦闘機戦闘訓練で、こちらは有視界状況での戦闘機同士の空中戦を行う訓練。旋回機動など、いわゆる「ドッグファイト」を行った。

騎士と侍

 3つめは戦術攻撃訓練。これは地上や水上の目標を攻撃する訓練だが、標的役に海上自衛隊の艦船が出るようなことはなく、何もない海上に目標の座標(緯度と経度)を設定し、その架空の目標に向けて攻撃訓練を行うというものだ。

 同広報室では訓練飛行の回数や詳細な内容は公開していないが、機体重量や出力、上昇率、旋回性能などが全く異なる機体とのDACTの機会は貴重で、訓練の目的である「部隊の戦術技量の向上」に大きく寄与したのは間違いない。

 訓練期間中には稲田朋美防衛相が三沢基地を訪問して英軍のタイフーンを視察した。また空自側の“歓迎”イベントとして太鼓演奏や綱引き大会なども開催。英国空軍パイロットがF-2戦闘機の復座型に搭乗し、空自パイロットの操縦で体験飛行を行う機会も設けられた。英国空軍もツイッターで「イギリスから来た騎士(ナイト)が、(日本の)サムライとともに飛びます」と友好ぶりをアピールした。

 この訓練は1月の日英外務・防衛閣僚会合(2+2)において中谷元防衛相(当時)とファロン英国防相が会談した際の合意に基づくものだ。英空軍はこの「タイフーン遠征」と同時並行の形で、同空軍のアクロバットチーム「レッドアローズ」を中国での航空ショーに出演させて、その「展開能力」を誇示した。

 北大西洋条約機構(NATO)は先月、ロシアの脅威に対応するため、東欧や北欧における多国籍部隊の配備を進める考えを示したが、英国にとって今回の遠征は、「アジアも忘れていない」ことを示すものとなった。