アナフィラキシーショック“迷ったら打て”の「エピペン」価格5倍の衝撃…ヒラリーもサラ・ジェシカも非難

世界ミニナビ
アナフィラキーショックなどが起きた緊急時に使用する注射薬「エピペン」。米製薬会社が価格をつり上げたことに反発が広がっている(AP)

 食物アレルギーやハチに刺されたことなどで引き起こされるアナフィラキシーに対し、緊急時に補助治療薬として使用する注射薬「エピペン」をめぐり、米国で騒動になっている。エピペンをほぼ独占している米製薬会社マイランが価格を5倍に引き上げたことで、米上院司法委員会が8月下旬、値上げについて説明するよう要請したのだ。アナフィラキシーショックなど万一の事態に備えて常備する注射薬だけに、価格の高騰は患者にとって死活問題。米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン前国務長官も値上げについて「常軌を逸している」と非難するなど、大幅値上げに反発が広がっている。

100ドルが500ドル

 ロイター通信などによると、マイランは、2008年には100ドル(約1万円)だったエピペンの価格について、今年は500ドル(約5万円)以上に引き上げたという。

 8年の間に価格が引き上げられて5倍になったのだが、この価格引き上げに対し、米上院司法委員会の委員長を務めるグラスリー上院議員が「どのようにエピペンの価格を決定しているのか」などとする書簡をマイランに送り、同社を非難した。

 また、AFP通信の報道では、米上院司法委の独占禁止・競争政策・消費者権利小委員会のクロウブシャー上院議員は、米連邦取引委員会(FTC)に反トラスト法(独占禁止法)違反容疑での調査を要求。クロウブシャー氏の娘はアレルギーを患っており、エピペンに頼っているという。

 こうした上院司法委の動きに伴い、8月23日のマイラン株は大幅安となるなど、米株式市場にも影響が出ている。

 また、エピペンは、処方され常備していても1年ごとに買い替える必要があるだけに、買い替えができないといった不安の声も出ているそうだ。

セレブも反発

 マイランによるエピペン値上げに対する反発は、その広告塔の降板劇も招いた。

 エピペンの「顔」を務めていた米女優、サラ・ジェシカ・パーカーさんが、自身のインスタグラムで値上げを批判し、広告塔降板を表明した。米人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の主役だったサラ・ジェシカさんは、息子にピーナツアレルギーがあるため、エピペンの重要性を認識して広告塔を務めていたという。

 こうしたセレブや、クリントン氏ら各方面からの非難が相次ぐ中、マイランは当初、エピペンは保険適用が認められているため、患者負担はほとんどないに等しいなどと反論していたが、その後、患者の自己負担額を軽減するとの対策を打ち出し、さらにエピペンの5割以上割安な後発薬を発売すると発表した。

日本も保険適用

 日本でもアナフィラキシーショックに陥った子供への使用をめぐり、その取り扱いが話題になったこともあるエピペンだが、平成23年から保険適用が認められている。

 24年には東京都調布市の小学校で、乳製品にアレルギーがある11歳の女児が学校給食でおかわりの際にチーズの入った食品を食べ、アナフィラキシーショックを起こし死亡。この際、エピペンが話題になった。

 この件では学校現場でのエピペンの使用をめぐって議論にもなったが、「迷ったら打て」と説く識者もいる。使用に際しては日本小児アレルギー学会が「一般向けエピペンの適応」を公表しており、それによれば、アナフィラキシーショックを疑う場合で「繰り返し吐き続ける」「持続する強い咳込み」「意識がもうろうとしている」などの症状が一つでもあれば、エピペンを使用すべきであるとしている。

 今のところ、米国での値上げが日本に即影響することはないとみられているが、今後、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が批准されれば、こうしたケースも日本に影響が及ぶ可能性があるのではないか、などという懸念の声も出ている。