(4)福島での3年は忘れない…阪神・歳内宏明投手

メッセージfrom関西
「いつか福島に恩返しができるように」と語る阪神の歳内宏明(松永渉平撮影)

 東日本大震災が発生したとき、聖光学院の野球部寮に1人でいました。家族は尼崎の実家にいたので心配はなかったのですが、寮は電気も水道も使えない状態でした。テレビも映らないので、直後は一切、情報が入ってこない。正直、被害の実感は湧きませんでした。

 原発事故が起こって、1週間、尼崎に帰りました。1週間たつと避難区域以外は大丈夫だと分かったので福島に戻りました。キャプテンを務めていて、早く帰りたい思いがあった。すぐに練習は始まらず、物資運搬のボランティア活動をチーム全員でやっていました。

 野球をやれるのかということより、普通の生活に戻れるかどうかが心配でした。それでも、夏の大会が始まると声援も前年より感じました。

 家族が亡くなったり、津波で家を流された選手と、地方から来た選手では思いは違ったかもしれません。でも、そのときはみんな、福島県民になりきっていた。本当に明るい話題がなかった。野球で何かをというのはおこがましい気もしました。でも、優勝すれば、ほんの少しかもしれませんが、明るい話題を福島に報告できるとみんなが考えていたと思います。

 夏の甲子園は2回戦で敗退し、翌年、阪神に入団しました。今は自分自身、余裕もないし、結果を残して1軍に残るので必死。でも、まだ、福島の方に名前は覚えてもらっていると思うので、小さな新聞記事でも載って「あ、頑張ってるな」って思ってもらう。それで今はいいと思います。

 でも、まだ復興は終わっていない。もっと活躍して中心選手になっていったら、福島の子供たちを甲子園球場に招待したりしたいですね。野球の影響力はすごく大きい、特に子供たちには。

 震災があって、福島にいた3年間があったからこそ、今の自分があると思っています。そこは忘れずにいたい。いつか恩返しができるように。福島のことは忘れずに頑張っていきたいですね。   (阪神タイガース投手)

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【プロフィル】歳内宏明(さいうち・ひろあき) 1993年7月19日生まれ。兵庫県出身。福島・聖光学院高で高校2年時、エースとして夏の甲子園で8強入りし、3年時も出場。2012年、ドラフト2位で阪神に入団。184センチ、89キロ、右投げ右打ち。投手。    =おわり

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 この連載は細井伸彦、吉原知也、上阪正人、坂井朝彦が担当しました。