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【東京2020 五輪が開く扉】(下)新国立、人呼び込む聖地に

 第2のマラカナンの悲劇-。2017年1月、前年夏に閉幕したリオデジャネイロ五輪のメインスタジアムだったマラカナン競技場の惨状が、ブラジルサッカー史に残る有名な出来事になぞらえてこう報じられた。

 競技場内に泥棒が入り、電気機器など豪華装備品が相次いで盗まれた。座席までもが無くなっていた。大会後の管理責任者があいまいで、警備がおろそかになったのが原因だった。かつてこの競技場で行われたサッカーW杯決勝で地元・ブラジル代表が敗れ、ショックのあまり死者も出た「悲劇」に例えられたのだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)が南米初開催を決めたリオ五輪だが、ブラジルは本番前から経済悪化と政情不安に陥った。警察は給料未払いに抗議するため、ストライキを決行。治安も急激に悪化していた。

 リオ組織委のレガシー(遺産)計画は財政難のために「なおも不完全」(IOC委員)。マラカナン競技場は一部修復され運用が再開されたが、現地の日本人女性は「住民にとって五輪は遠くかなたに消えうせてしまった」と語る。

 五輪の受難は近年の冬季大会でより顕著だ。昨年開催の韓国・平昌(ピョンチャン)では大会後の施設利用の見込みが外れた。14年のロシア・ソチはクリミア併合が暗い影を落とし観光客数が低迷している。両都市とも巨額投資に見合っていない。近年の五輪招致では、閉幕後の施設が「負の遺産」となることを嫌う住民の反対で、立候補都市が減っている。

 「開発型五輪は限界を露呈した。IOCは東京と22年冬季大会の北京で五輪のレガシーを残せることを証明したいと考えている」

 早稲田大学スポーツ科学学術院教授の間野義之は、五輪の理想が色あせる中で行われる東京大会の位置付けをこう解説する。

 ◆最上階には遊歩道

 東京都が新設する水泳会場「東京アクアティクスセンター」など6施設のうち、企業グループに運営権を売却する「有明アリーナ」以外の5施設は指定管理者に運営を任せるが、17年の試算では計画通りの利用があっても年間収支は、5施設いずれも赤字が見込まれている。収支の改善努力はもちろんだが、いかに施設が市民に受け入れられ、利用されるかが問われている。

 総工費約1500億円のメインスタジアム、新国立競技場はレガシーを残すために知恵を絞る。その一つが「空の杜(もり)」と名付けた1周約850メートルの遊歩道を最上階に設けたことだ。デザインした建築家の隈(くま)研吾は「われわれの売りだ」と語った。試合観戦以外にも気軽に訪れてもらえれば、五輪の興奮や感動は多くの人に引き継がれる。間野は「観光名所になるはずだ」とも語る。

 政府は17年に大会後は陸上トラックを撤去して球技専用に改修し、民間事業者に運営権を売却する方針を打ち出したが、採算性とともに、レガシーの観点からトラックを残す方向で調整が行われている。

 ◆コト消費の切り札

 スポーツを核にして観光客を呼び込む「スポーツツーリズム」は成長産業に位置づけられ、政府は22年の関連消費額を18年の約2倍に相当する3800億円に増額させることを見込む。みずほ総合研究所経済調査部長の太田智之は「スポーツがインバウンド獲得の有力コンテンツになる。体験型のコト消費をいかにつくるかだ」と指摘する。

 東京五輪開催を契機にスポーツがさらに人を呼び込むコンテンツとしての地位を獲得し、競技やその施設を核ににぎわいが生まれるなら、「レガシー」といえるだろう。

 スポーツの価値をいかに育てられるか。前回東京五輪で旧国立競技場はスポーツの聖地となった。新国立は再び聖地としての魅力をまとえるのか。

 IOC五輪統括部長のクリストフ・デュビは24日、「東京大会から、将来の大会組織委員会も多くのことが学べるだろう」と語った。大会後に向けても真価の問われる一年となる。 (敬称略)

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 この連載は森本利優、宝田将志、西沢綾里、桑原雄尚、井田通人、高木克聡、佐々木正明が担当しました。

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