【オリンピズム 道 東京へ】水面舞う“蝶”池江璃花子(2)イメージトレーニングは5歳から - 産経ニュース

【オリンピズム 道 東京へ】水面舞う“蝶”池江璃花子(2)イメージトレーニングは5歳から

5歳のころ、プールで楽しげに泳ぐ池江璃花子(本人提供)
 「二刀流」の呼称は大谷翔平(米大リーグ・エンゼルス)だけの“専売特許”ではない。自由形とバタフライの2泳法で、個人計5種目(長水路)の日本記録を持つエース池江璃花子(ルネサンス)も、日本競泳界で珍しい「二刀流」選手として圧倒的な輝きを放つ。
 泳法や距離が異なる5種目を速く泳ぐ技術に加え、強靱(きょうじん)な肉体を持ち、東京五輪に向け過熱するプレッシャーにも負けることがない。類いまれな才能の原点は何なのか-。
 それは幼少期の母の教えにあった。母・美由紀さんは26歳のとき、産経新聞で当時、連載されていた「赤ちゃんはみんな天才」と題するコラムに出合い、幼児教育について興味を持った。
 「鳶(とんび)が鷹(たか)を生むみたいに、私がしっかりやれば、子供は幸福に生きていける」。子供の才能を最大限に引き出すため、コラムで取り上げられた講座に参加し、脳を鍛え、心を育む教えについて勉強した。長女を産み、講師の資格を取得した後に長男を産んだ。
 2000年7月4日。3番目の璃花子は、「一番負担が少ないように」と自宅に助産師を呼び、風呂場で水中出産した。いとおしい娘は少しの間、水の中を漂い、抱き上げると元気よく泣いたという。まさに“水の申し子”だった。
 池江が生後間もなく連れていかれたのは、母親が主宰する幼児教室だ。そこには雲梯(うんてい)があった。「握る」という動作が手の神経を刺激し、脳の発達を促すと記述していた本をきっかけに設置されたものだ。生後半年で、頭上に掲げられた膝立ちの母の指にぶら下がった娘は2歳になると、この雲梯で一人で遊べるようになったという。
 3歳で水泳を始め、日々の出来事やひらめいたことを言葉や絵にして次々と発表するようになる。人前に立つことに慣れ、注目されることが大好きな少女になっていった。5歳で全泳法をマスター。この頃から日課としているのが、現在まで続くという眠る前のイメージトレーニングだ。
 ベッドで目を閉じ、各選手がスタート前に集められる会場の招集所へ。そして気持ちを高めてスタート台に立ち、水中で思い切り水をかき、記録を確認。さらに勝利インタビュー。フォームが乱れたり、順位が落ちたりすると、最初からやり直すという徹底ぶりだ。幼少期から何度も何度も、最高の自分をイメージしてきた。「心に描き続けた願望はきっと実現する」。これが母の教えだった。
 だからだろう。東京五輪のメダル候補として、どれだけ大きな期待を集めて、試合会場に取材陣が殺到しても、「プレッシャーというものを感じない」。むしろ、自らに注がれる多くの人の目を「力に変えられる。それが自分の良いところ」と胸を張る。
 多いときは1日に5、6レースもこなす18歳。自分の力を信じ抜く強さで、どんな場面でも動じない心を持っている。(西沢綾里)