水面舞う“蝶”池江璃花子(1)東京で「1番」になる

オリンピズム 道 東京へ
パンパシフィック選手権の公式練習で、仲間とタッチを交わす池江 =8日、東京辰巳国際水泳場

 泳ぐたびに日本新記録を連発。塗り替えた個人記録は実に12個-。バタフライを得意とし、“水面を舞う蝶(ちょう)”と呼ぶにふさわしい池江璃花子(ルネサンス)は、2020年東京五輪でわずか1人しかたどり着けない「世界一」への道を歩んでいる。

 「ここで終わらせるつもりはない。世界記録も視野に入れたい」。今年4月、日本選手権100メートルバタフライ決勝で56秒38の記録をたたき出した池江はキッパリ宣言した。

 この記録は、16年リオデジャネイロ五輪の銀メダルに相当する高速タイム。池江が世界記録への挑戦を口にしたのは自身をギリギリまで追い込んでつくった好記録に手応えを感じている証拠でもある。

 「同じことをしていると飽きちゃうので」。無邪気に笑うこの性格こそが、日本競泳界の歴史を次々と塗り替える原動力だ。

 姉と兄の影響で3歳から水泳を始め、5歳で全泳法をマスター。同世代で競う全国大会で優勝したのは小学6年の夏だ。この直後、日本代表の強化合宿先でもあるプールで「エリート小学生研修」に参加した。けがを回避する体のケアや親同伴の栄養講習も行われた飛躍の“原点”だ。

 池江の快進撃の始まりは15年秋、中学3年で参加した東京のワールドカップ(W杯)。100メートルバタフライで自己ベストを0秒71も更新する57秒56の日本新記録を出した。想像以上の記録に、「私のタイム、おかしくないですか」と思わず隣のコースの選手に確認した。

 身長170センチ、体重57キロのスラリとした体格。強さの秘密を探ると、目につくのが天性の「技術力」だ。14歳で中学記録を出した時から、ダイナミックなストロークながら、水しぶきの少ない柔らかな泳ぎは異彩を放っていた。

 当時、どう習得したのかとの質問に「昔からコーチに教わらなくても上手に泳げていたみたい」と言ってのけた。

 いわば自己流で磨いてきた世界レベルの泳ぎは、優れた「柔軟性」と相まって生まれたものだ。日大文理学部教授で泳法を分析する野口智博氏(51)によると、池江の肩関節は人並み外れて柔らかく、記録を連発するバタフライ、自由形ともに頭から遠い位置にある水に手のひらを当てることができる。このため、1かきで水を引っ張る距離が他選手と比べ格段に長い。特にバタフライでは進む距離が「少なく見積もっても(他選手より)10センチ違う」という。

 6月の欧州グランプリで、100メートルバタフライの世界記録保持者、スウェーデンのサラ・ショーストロム(24)に0秒75差まで迫った池江にはスタートとターンに改善の余地がある。筋力を強化すれば「(世界新は)意外に遠くない」と野口氏はいう。

 東京五輪まで2年。戦いの場は、日本が世界でなかなか通用しなかったパワー系の短距離種目。池江は大好きなお肉をレストランでほおばりながら周囲にこう話している。

 「1番」になる-。(西沢綾里)