混雑緩和 交通量抑制・規制の二段構え 「超渋滞現象」回避へ待ったなし

東京五輪

 2020年東京五輪・パラリンピック期間中の混雑緩和に向け東京都と大会組織委員会、国が民間企業などに協力を呼びかけ、交通量を抑制する交通需要マネジメント推進プロジェクトが立ち上がった。大会関係車両、観戦客らの移動などが見込まれ、渋滞の悪化が懸念されるため、時差出勤や休暇取得などを促して大会運営と都市活動の両立を目指す。十分な交通抑制を行わなければ、深刻な「超渋滞現象」(グリッドロック)が発生する懸念が指摘されており、東京大会の交通輸送対策は「待ったなし」の状況だ。(三宅真太郎)

経済団体からは「幅広い理解必要」

 「経済界の皆様には取り組みの牽引(けんいん)役になってもらいたい。一致団結しながら、大会の成功に取り組みたい」

 8日、都庁で開かれた交通需要マネジメント推進プロジェクトの発足式。鈴木俊一五輪相、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長、経済団体の代表者ら出席者に対して、小池百合子知事はこう呼びかけた。

 組織委と都は今年1月、「対策を講じなければ首都高の渋滞が2倍近くまで悪化する」との想定をまとめ、交通量抑制の「交通需要マネジメント」と、交通規制の「交通システムマネジメント」の二段構えの対策で臨む方針を打ち出した。

 今回の推進プロジェクトは、対策の本丸といえる交通量抑制に取り組む。協力企業を募り、混雑する時間を避ける時差出勤、自宅などで仕事をする「テレワーク」、夏季休暇取得など取り組み可能な行動指針の策定を要請する。物流関連では集荷・配達の回数減などの協力を呼びかけることになる。

 ただ経済活動は全国、世界とつながっており、東京圏の枠を超えて個人・企業の理解を取り付けることが課題となる。この日の発足式でも、経済団体から物流に関し、荷主、消費者も配送時間を交通のピーク時からずらすなど「幅広い理解を得る必要がある」との指摘が出された。

超渋滞現象、東日本大震災時に都内で発生

 対策のもう1つの柱である交通規制は、大会関係者の通行に使われる首都高などへの一般車両の流入調整▽道路の区間通行止め▽車線規制-などが想定されるが、警視庁幹部は「交通量抑制が十分でない状態で規制すれば、都心部において渋滞が爆発的に広がる恐れがある」と指摘する。

 警視庁内で懸念されているのは、車両が道路上に滞留してほとんど動かなくなる超渋滞現象(グリッドロック)。同庁によると、同現象は平成23年3月11日の東日本大震災の際、広範囲にわたって発生した。

 当時は(1)首都高速道路の全面通行止めで一般道の車が増加(2)帰宅難民の家族を迎えに行くために郊外から都心部に大量の車が流入(3)公共交通機関がストップして歩行者が路上にあふれ車の通行を妨げる-の要因が重なり、渋滞が同時多発的に拡大した。

 11日夜の時点で都内の一般道の渋滞総延長は平常時の16倍に相当する1062・3キロ。一般道の約4割が車で埋まったことになり、渋滞が解消されたのは翌12日の午前中だった。

 警視庁関係者は「東日本大震災と東京五輪では環境は大きく異なるものの、車両の増加、交通規制という条件は類似している」と指摘。震災時のような広範囲ではないものの、大会会場が集まる臨海部周辺や都心部で超渋滞現象が起こりうるとしている。

 超渋滞現象は、大会関係者輸送も遅れるなど大会運営のタイムスケジュールに狂いが生じるほか、緊急車両通行、一般人の移動や物流などの都市活動に悪影響を与えることが懸念される。

 同庁は、交通量抑制の取り組みを踏まえ、交通規制など具体的なメニューを決めていくとしており、同庁幹部は「あと2年しかなく、時間的な余裕がない。輸送・交通対策は『待ったなし』の状況だ」と話す。