北京五輪の「レガシー」はいま 開幕から10年、一部は廃墟化

 
砂のコートに雑草が生え、観客席の手すりも錆び付いた北京五輪のビーチバレー会場=6日、中国北京市(西見由章撮影)

 2008年北京五輪の開会式から8日で10年を迎える。中国当局は五輪をテコに国威発揚とインフラ整備を進めたが、そのレガシー(遺産)は各種スポーツの普及という本来の使命を果たしているのか。市内の会場跡地を歩いた。(北京 西見由章)

 「中には入れないよ。五輪後はほとんど使われてないって話だ」。6日午後、北京五輪のビーチバレー会場を訪れると、会場に隣接する駐車場でビアガーデンの準備が進められていた。警備員によると会場内は立ち入り禁止だ。外側のトイレだけがビアガーデンの来場者ら向けに開放され「有効利用」されていた。

 1万2千人収容の専用スタジアムで周辺施設も含めると総建設費は2億元(約32億円)。施錠されたフェンス越しに中をのぞくと観客席の手すりはさび付き、砂のコートは雑草が生えるなど“廃墟”感が漂う。

 跡形もなく撤去され、人々の記憶にすら残っていない施設もある。1万5千人収容の野球場は、中国で普及していないことなどを理由に開催翌年に撤去された。現在は大型ショッピングセンターが整備されている。「野球場? よくわからない」。警備員ら5人ほどに跡地の正確な場所を聞いて回ったが、かつてスタジアムがあったことすら知らない。ようやく年配の駐車場管理員が跡地の大まかな場所を教えてくれた。

 北京五輪のメイン会場、国家体育場(通称・鳥の巣)を擁する市内の五輪公園は、夏休み期間ということもあり親子連れでにぎわっていた。貴賓席や屋上部分も参観できるコースは1人110元。泡を集めたような形状の国家水泳センター(通称・水立方)は30元のチケットが必要だ。どちらもユニークな外観で来場者の撮影スポットとなっている。

 鳥の巣は22年に北京市と河北省張家口市で開催される冬季五輪の開会式会場となる。ただ9万1千人収容の巨大スタジアムが、スポーツの会場として普段使われることは少ない。訪れた6日午後は、国内歌手のコンサートに向けて舞台の設営が進んでいた。フィールドの芝生ははがれ、陸上のトラック上には機材が積み上げられていた。

 巨大すぎるためにスポーツ会場としての利用が伸びず、見物客も減少傾向にあるとされる。年間の維持費は2億元弱だ。施設運営側は中国メディアに「3年連続で利益を出した」と黒字体質をアピールするが、財務状況は公表されておらず疑念の声も根強い。

 一方、「水立方」は館内の予備プールが一般利用者向けに開放され、年間延べ約30万人が利用するなどにぎわいをみせる。競技用プールは冬季五輪のカーリング会場として改修され「氷立方(アイス・キューブ)」に生まれ変わる。