【写 2020】パラスポーツ ウィルチェアーラグビー・倉橋香衣 明るく楽しく気負わずに - 産経ニュース

【写 2020】パラスポーツ ウィルチェアーラグビー・倉橋香衣 明るく楽しく気負わずに

ウィルチェアーラグビーの倉橋香衣さん=栃木県足利市
 「ガシャン」。金属がぶつかり合う鈍い音が体育館に響き渡る。パラスポーツの中で唯一、車いす同士の接触が許されるウィルチェアーラグビー。屈強な選手の中、紅一点として奮闘を続けている。
 大の運動好き。小学校1年から高校までは体操に熱中、体育教員を目指して入学した大学でトランポリンに転向した。しかし、2011年4月24日。大学3年時に出場した大会で、人生が大きく変わった。
 決勝前のウオーミングアップで前方に1回と4分の3回転して、背中から着地する技を試みた。「跳躍の瞬間、失敗と分かった」が、リカバリーできなかった。頭からマットへ。直後から呼吸困難に陥り記憶が薄れる。救急隊員の声が途切れ途切れで聞こえた。
 首から下の感覚がない。頸髄(けいずい)損傷による四肢のまひだった。少し起き上がるだけで貧血になる過酷な状況が続いた。が、周囲が驚くほど明るく、3年間リハビリに取り組んだ。最初は手も動かせなかったが「悲観的にはならなかった。歯磨きや着替えが1人でできると喜びを感じた」と常に前向きだった。
 「楽」
 リハビリ施設を退所する際に贈られたスタッフの寄せ書き。今も交流が続く理学療法士の和田真琴(まこ)さん(31)が記した一文字が支えになっている。「楽しく、気負わずに」とのメッセージと解釈した。これ以降「なんとかなるやろと思うようになった」と笑みがこぼれる。退所後は事故前と同じく1人暮らしを続けて復学。車での移動もこなした。
 リハビリで水泳や卓球など、多くの競技に挑戦したが「車いすでぶつかるのが楽しい」とウィルチェアーラグビーに専念。2015年4月には強豪チーム「BLITZ」に入団した。今では、持ち前の明るさと当たりを恐れない強さで、チームのムードメーカーになっている。
 ウィルチェアーラグビーは4人制。障害の程度で選手に持ち点が付く。最も重い0・5から一番軽い3・5まで0・5刻みで7段階。コート上のメンバー4人の合計は8までだが、女性1人で0・5が引かれる。重い障害で持ち点0・5の倉橋はコートに入っても0。残り3人で8点使えるため、チーム編成や戦術的に欠かせない存在だ。
 昨年、女性初の日本代表に選ばれたが、活躍の場が世界に移りレベルの差を痛感した。「同じ障害の男性選手と同レベルになって、初めて女性選手のアドバンテージが生まれる」と、自分の役割を分析する。目標はもちろん、東京パラリンピック。実現には日本代表に入り続けることが必須だ。2020年に向けた戦いは、もう始まっている。(写真報道局 大西正純)
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【プロフィル】倉橋香衣
 くらはし・かえ 1990年9月15日生まれ。27歳。神戸市須磨区出身。市立須磨高校(現須磨翔風高校)、文教大卒。小中高校の教員免許を持つ。好きな食べ物は、もずくと貝類。商船三井所属。