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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(205)落日の抗議㊤審判の説明でまた火がついた

「ファウルだ」と上空を指さし抗議する上田監督(左)右は富沢線審=後楽園球場
「ファウルだ」と上空を指さし抗議する上田監督(左)右は富沢線審=後楽園球場

 シリーズは〝死闘〟となった。

 第5戦 阪急3-7ヤクルト(西宮)

 第6戦 ヤクルト3-12阪急(後楽園)

 そして最終第7戦を迎えた。

◇第7戦 10月22日 後楽園球場

阪 急 000 000 000=0

ヤクルト000 012 01×=4

【勝】松岡2勝2S 【敗】足立1勝1敗

【本】大杉③(足立)④(山田)マニエル③(松本)

 「事件」はヤクルト1点リードの六回に起きた。1死走者なしで大杉の放った打球は左翼ポールのわずか左を通過したように見えた。ファウルか…飛び出したヤクルト選手も肩を落としてベンチへ戻りかけたそのとき、左翼・富沢線審の右腕が回った。大杉は飛び跳ねるようにベースを一周。だが、阪急の選手たちは収まらない。

 「ホームラン? 切れたじゃないか!」と左翼の簑田や三塁の島谷が審判に詰め寄る。ベンチから上田監督が駆けつけ猛抗議が始まった。

 「どこを見ている。完全にファウルじゃないか。ポールの左を通過した。お客さんも見ている」

 左翼フェンスの下で上空を指さし抗議を続ける上田監督。判定が覆らないのは百も承知。だが、簡単に引き下がるわけにはいかない。選手の士気にも影響する。後年、上田はこう振り返った。

 「いつ矛を収めるか、ギリギリのところを計っていた。審判だって人間。間違うこともある。あのとき少しでもそういうニュアンスの言葉があったなら、ボクも選手たちも“仕方ない。やり直そう”という気持ちになった。でも、あくまで高圧的だった」

 振り上げたこぶしが下ろせないまま選手全員をベンチに引き揚げさせた。10分が経過。上田監督は「試合を再開しよう」と思ったという。だが、富沢審判の場内アナウンスでまた火がついた。

富沢「ただいま阪急の上田監督から抗議がありましたが、完全に…」

上田「おい、こちらの抗議の内容も言えよ!」

富沢「ポールの上を通過した、完全なホームランであります」

 上田監督は説明に激高。そして抗議の方向が変わった。

 「あんな誤審をやる審判の下では試合はできない。審判を代えてくれ」

(敬称略)

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