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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(204)魔差した瞬間 交代のはずが情移り…逆転被弾

第4戦、完膚なきまでに叩きのめされた今井は泣いた=西宮球場
第4戦、完膚なきまでに叩きのめされた今井は泣いた=西宮球場

 足立の〝奮投〟で2勝1敗とした阪急。第4戦の先発は今井。第2戦3回KOの雪辱の登板だった。

◇第4戦 10月18日 西宮球場

ヤクルト 000 004 002=6

阪 急  130 010 000=5

【勝】西井1勝 【敗】今井2敗 【S】松岡1勝1S

【本】ヒルトン①(今井)

 今井は必死に踏ん張った。六回、味方のエラーも重なって1点差に迫られたものの九回2死走者なし。だが、ヤクルトも粘る。代打伊勢が三遊間安打を放ち打者ヒルトンを迎えた。

 ここでベンチから上田監督が出てきた。誰の目にも「交代」と見えた。上田監督自身も「山田と代えるつもりでマウンドに行った。ブルペンから準備OKの報告もあったしな」という。ところが、何を思ったのか上田監督は今井に「代わるか?」と尋ねた。当然、今井は「投げます」と答えた。

 いつもの行動ではなかった。普段、投手交代のときはベンチを出たらまず、球審に交代投手の名前を告げ、新しいボールをもらいマウンドに行く。それがこのときは、直接マウンドに向かっていた。

 イヤな予感が…。0-1からの2球目が内角へ。及び腰になりながらもバットを振り抜いたヒルトンの打球は高く舞い上がり、逆転2ランとなって左翼ラッキーゾーンへ飛び込んだ。

 「魔が差した。雄ちゃんもシリーズ初勝利が目の前やったし情が移って…。ボクの判断が甘かった。ボクの失敗や」

 上田監督はヒザを叩いて悔しがった。

 泣きながらマウンドを降りてきた今井はロッカールームでも泣いた。そして座っていたイスから崩れ落ち、下着姿のまま「く」の字になって埃(ほこり)だらけの床に横たわった。人は辛いとき悲しいとき背中を丸めて眠るという。この時の今井がまさにそれだった。30分後、目を覚ました今井はポツリとつぶやいた。

 「行けといわれれば、もう一度…」

 本来なら4点を奪われたところで山口の投入。だが、このシリーズ、山口は腰痛で使えない。この日も腰に6本の痛み止めの注射を打ってブルペンに入っていた。「ダメなんです。投げられない」。ロッカールームに戻ってきた山口もまた、目を真っ赤に腫らしていた。  (敬称略)

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