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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(188)生きていた男 「燃え尽きるまで」代打・長池一閃

代打逆転本塁打を放ちナインに出迎えられる阪急の長池③=西宮球場
代打逆転本塁打を放ちナインに出迎えられる阪急の長池③=西宮球場

 後期、阪急の前に立ち塞がったのは西本幸雄監督率いる近鉄。就任5年目、「西本学校」でコツコツと育ててきた選手たちがようやく花開き始めていた。後期開幕戦の先発オーダーはこうだ。

 ①平野(中)②石渡(遊)③佐々木(右)④栗橋(指)⑤羽田(三)⑥島本(左)⑦有田修(捕)⑧アーノルド(一)⑨西村(二)

 投手陣もエース鈴木を中心に神部、井本、柳田、村田、太田幸と充実。そしてこの昭和53年後期から、これまでの黒地に赤の「B」の帽子から、赤白紺「猛牛」マークの三色帽子に替わっていた。

 9月10日終了時点で首位は阪急。0・5ゲーム差で近鉄。そして「阪急-近鉄」4連戦を迎えた。

◇9月11日 西宮球場

近鉄 000 000 100=1

阪急 000 000 41×=5

【勝】稲葉10勝5敗 【敗】鈴木23勝9敗

【本】アーノルド⑬(稲葉)長池⑤(鈴木)=満塁

 試合は七回に先頭のアーノルドが左翼へ13号本塁打を放ち0-0の均衡が破れた。「1点で逃げ込める」と西本監督が思ったその裏、鈴木が崩れた。島谷、河村の連打とウイリアムスへの四球で無死満塁。ここで上田監督は「代打」に長池を送った。ネット裏で「なぜ?」の声が起こる。かつて阪急の「不動の4番」といわれた長池も34歳。新しい波に押され輝きを失っていた。右ひじの関節炎で水がたまり2軍落ち。8月25日に復帰したばかり。

 「燃え尽きるまでやる。まだ、ぼくは自分の限界を極め尽くしたとは思っていない」。打席に向かった長池には鬼気迫るものがあった。

 「スズがフォークを投げたら、イケは絶対に打つで」。記者席でこう〝予言〟したのは、左ひざの関節炎で長池とともに2軍で調整していた足立だった。

 そのフォークボールがきた。1-0後の2球目だ。長池のバットが一閃。快音を発した打球はバックスクリーン左へ飛び込んだ。

 「鈴木の力に真っ向から勝負したのがよかった。今度はスタメンから出られるように努力するよ」

 歓喜のナインたちに出迎えられた長池は照れ臭そうに笑った。

(敬称略)

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