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【鬼筆のスポ魂】選手の総意を退けた闘将の選択 植村徹也

 生前、闘将から聞いた言葉だ。理屈としてはのみ込める。ただ、いかに闘将の言葉とはいえ、すぐに選手たちがうなずいたわけではない。チーム内では「どうして帰してくれないのか」と不満が充満した。

 「選手たちには、だいぶん不満があった。その気持ちも分からんではない」

 星野監督は心の中では選手の気持ちを理解しながらも、表情や言葉にそんな感情をみじんも見せなかった。チーム内では「監督対選手」という不穏な空気が漂った時期もあった。

 約1カ月後の4月7日、チームはようやく仙台に帰った。宮城県内の4カ所(山元町、女川町、東松島市、仙台市若林区)の避難所を訪問。惨状に息をのむ選手たちの気持ちの中に、徐々に闘将が言わんとする意志が刺さり始めた。

 愛する者を失い、大事な物を奪われ、傷ついた東北の人々の心を励まし、立ち上がる力を与えるために、自分たちには何ができるのか。闘将が選手の総意を退けてまで伝えたかった野球選手としての責務を、ジワジワと感じた。選手の総意を伝えていた嶋も4月2日に行われたプロ野球12球団チャリティーマッチ「東日本大震災復興支援試合」での日本ハム戦を前にスピーチ。「見せましょう野球の底力を」とファンに語りかけた。どうして帰してくれない…から、野球の力で復興を…と気持ちを切り替えられたからこそ出た言葉だろう。楽天というチームは勝利に飢え、勝つことの意義を信じた。

 それから2年半後の2013年11月3日、星野監督は仙台で宙に舞った。楽天を球団創設9年目で初の日本一に導いた。東北の人々は歓喜にわき、涙を流した。「監督ひとりVS支配下選手70人」の中で、闘将が貫いた選択は正しかった。(特別記者)

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