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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(173)カネやんの思い 「野村を取ってくれ」 球団に懇願

「ウチに来い」と野村(左)を説得するロッテ・金田監督=銀座の料亭「やま袮」
「ウチに来い」と野村(左)を説得するロッテ・金田監督=銀座の料亭「やま袮」

 ドラフト前の11月17日、南海を追われるような形で退団した野村克也のロッテ入団が決まった。午後2時から、東京・錦糸町のロッテ会館で野村の入団発表が行われた。契約金なし、年俸1800万円。背番号「19」。肩書は「捕手兼アドバイザー」である。

 昭和28年9月に南海のテストを受け、鶴岡一人監督の「まぁ、カベ(ブルペン捕手)ぐらいにはなるやろ」のひと言で合格。入団発表などはなく、初任給は月給7000円。背番号は「60」。

 「契約のとき『金8万円也』と書いてあるんで、そんなに月給もらえるんか-ビックリしたら、あとで年俸額と知ってガッカリしたわ」

 アドバイザー野村は早速、ロッテの弱点を指摘した。

 「ロッテは細かなサインや連係プレーなど、小さなことがもうひとつ出来ていない。例えばすべての投手がバッターをストライクで牛耳ろうとしている。球威のある人はいいが、そうでない人まで同じパターン。自分の力を知った上での投球をすべきだ。自分の体験したものをすべてロッテで出すことが恩返しだと思っている」

 42歳の野村を球団に「どうしても取ってくれ」と懇願したのは金田正一監督。2歳年下の野村と金田はグラウンドだけでなく、私生活でも家族ぐるみの付き合い。〝兄弟〟のような関係だった。

 「ノムが若いころは銭がなくて、いっつも杉浦と2人で泣きついてくるんや。よう飲ませたり食わせたりしたもんや。そんな男が〝さらし者〟にされとるのを黙って見ておれんかった。ノムから学ぶ点はワシにもコーチ連中や選手にもたくさんある。せやからアドバイザー兼任という肩書をつけてもろた」

 10月24日、金田監督は東京・銀座の料亭「やま袮」に野村を招き、「ウチに来い」と説得した。

 入団会見で金田と野村は固い握手を交わした。

 「ノムの加入でウチの打線の〝野村コンプレックス〟が消えるし、投手陣に及ぼすプラスαは計り知れん。ノムには南海で経験できなかった、人情味あるムードの中で野球をやってもらう」

 さすがカネやん。皮肉たっぷり。会場は笑いの渦に包まれた。

(敬称略)

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