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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(71)ドンの信頼 大舞台で育てた2年目・堀内   

第2戦、6安打完封の堀内⑱をにぎらう巨人・川上監督=西宮球場
第2戦、6安打完封の堀内⑱をにぎらう巨人・川上監督=西宮球場

 翌10月22日の第2戦も西宮球場には3万7千人の大観衆が詰めかけた。巨人の先発は入団2年目、19歳の堀内恒夫。阪急は入団9年目、この年、20勝を挙げた27歳の足立光宏。試合は白熱の投手戦となった。

 先手を取ったのは巨人だ。二回、1死から高倉、国松の連打で一、三塁とし、森が左犠飛。その1点を堀内が守り抜く。阪急は足立が三回以降、2安打に抑えるものの、打線が堀内を崩せない。巨人より多い6安打を放ったが無得点に抑えられた。

◇第2戦 10月22日 西宮球場

巨人 010 000 000=1

阪急 000 000 000=0

【勝】堀内1勝 【敗】足立1敗

 「よくやった。よく投げた」とベンチ前で完封勝利の堀内と握手する川上哲治監督に、カメラマンが殺到した。

 実は前年(41年)の南海との日本シリーズでも、川上監督は第2戦にルーキーの堀内を先発させていた。それは確率を重視する川上用兵としては異例の抜擢だった。コーチ陣たちは反対した。それでも川上監督は「オレに任せてくれ。そのかわり、悪かったらすぐに代えるから」と押し切った。

 結果は一回1死一、三塁のピンチで、野村克也に右翼フェンス直撃の二塁打されるなど2失点。四回のマウンドから交代した。試合は2-5で敗れ、1勝1敗となったが、川上監督は満足そうな表情をしていたという。

 堀内恒夫、昭和23年生まれ。山梨・甲府商から40年の第1回ドラフトで1位指名。1年目の41年、初先発した4月14日の中日戦(中日球場)で、ウオームアップの1球目をわざとバックネットにぶつけて周囲を驚かせ、6回6安打2失点で初勝利。開幕13連勝を含む16勝(2敗)を挙げ、「最優秀防御率(1・39)」「最高勝率(・889)」「新人王」を獲得した。

 堀内を巨人のエースに育てるためには、ひとつの負けより、大舞台を経験させることの方が「大きい」と考えての抜擢だったのだ。そして川上監督は今回も2戦目で堀内を送り出した。

 「去年は顔見せだったが、ことしは戦力として働いてもらうよ」

 ドンの信頼に応える完封勝利。2人の握手にはそんな思いが込められていたのである。

(敬称略)

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