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【パラバドミントン】里見・山崎ペアが13連続得点で劇的逆転「応援の声、力に」

 東京パラリンピックのテストも兼ねたパラバドミントンの大会「ヒューリック・ダイハツ JAPAN パラバドミントン国際大会 2019」が11月13~17日、東京都渋谷区の国立代々木競技場第一体育館で行われた。パラリンピック出場に必要なポイントが付与されるため、35カ国・地域から219選手が集まり、熱戦を繰り広げた。

 日本勢はWH1(車いすで障害が重いクラス)-WH2(車いすで障害が軽いクラス)女子ダブルスでは里見紗李奈選手(21、NTT都市開発)/山崎悠麻(31、同)選手のペアが決勝で中国人ペアにゲームカウント2-1(14-21、25-23、21-15)で逆転勝ちし、連覇を達成。SU5(立位上肢障害)女子シングルスで鈴木亜弥子選手(32、七十七銀行)が中国のヤン・チュウシャ選手をゲームカウント2-0(21-19、22-20)と接戦ながらもストレートで下し、3連覇を果たした。

表彰式で金メダルを手に笑顔の里見紗李奈選手(左)と山崎悠麻選手
表彰式で金メダルを手に笑顔の里見紗李奈選手(左)と山崎悠麻選手
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練習重ねた陣形で自信

「応援の力が、大きかった」

 車いす女子ダブルスの里見選手は、決勝戦の最終セット、4-14の土壇場から13連続得点で流れをつかみ、逆転したときの心境を振り返った。

 WH1の里見選手とWH2の山崎選手がペアを組むWH1-WH2の決勝では、山崎選手のライバルで、WH2シングルス優勝の中国人選手、リウ・ユートンとWH1のイン・モンルー選手のペアと対戦。このクラスでは、互いに障害の重いWH1の選手を狙い打ちにする戦術が採用されることが多い。日本は狙われた里見選手が中心となり、山崎選手のカバーを受けながら打ち合う展開となった。

 シングルスでは、里見・山崎両選手ともに3位の結果だった。昨年優勝したダブルスで、連覇にかける思いは強い。

 強烈なスマッシュを放つリウ選手に打ち込まれないよう注意しながら、ラリーを続ける里見/山崎ペア。第1セットは取られるも、2セット目を25-23でもぎ取り、フルセットへと突入した。

最終セットでは、里見/山崎ペアは思うように得点を伸ばせず、3-11でインターバルを迎えた。バドミントンの試合では、一方のチームが11点を先取した時点で、短いインターバルが設けられる。第3セットでは、ここでコートの入れ替えも行われる。使用されるシャトルは軽く、風の影響を受けやすい。このインターバルで、里見/山崎ペアは2セット目を取った、球が伸びやすい追い風のコートに戻った。

 このときまで、スピードがある中国ペアに対して2人がコート上で横に並ぶ、守備に強い陣形サイド・バイ・サイドで対応してきた。得意とするローテーション(前衛と後衛が入れ替わり、相手の球を打ちやすい陣形を流動的に作る戦術)では、スピードに優れた相手ペアに対応できないと考えていたからだ。

 もう、あとがないという土壇場で、里見選手は「“サイド・バイ”は私たちらしくない。何をやってもだめなら、練習し続けてきたローテーションをやろう」と、考え方を切り替えた。4-14と、点差を広げられてしまったが「コートチェンジ後に思ったよりも打球が伸びたから、ひるませられたかもしれない」と相手の反応を見逃さなかった。

 練習を続けてきたローテーションに切り替えたことで「気持ちに余裕が出てきて、いつも通りプレーできた」という里見選手が、相手コート奥のライン際を狙った厳しいコースを突いたクリアを連発した。隙を突いて手前に球を落とすなど前後の揺さぶりも加え、これが奏功。得点を重ねるたび、笑顔でハイタッチして気持ちを盛り上げていった里見/山崎ペアは怒濤の13連続得点を決め、17-14と逆転を果たした。

得点を重ねハイタッチする山崎悠麻選手(左)と里見紗李奈選手
得点を重ねハイタッチする山崎悠麻選手(左)と里見紗李奈選手
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 会場の応援もインターバルの直後、追う展開では「一本、一本」だったが、点を重ねて追い上げムードが醸成されると、「ゆーま、チャチャチャ、さりな、チャチャチャ」と一体感のある声援で2人のプレーを力強く後押しした。

 中国チームのヘッドコーチは、日本に傾いた流れを断ち切るべく水分補給の小休止を申し出て、再度の短いインターバルが設けられたが、里見/山崎ペアの勢いは止まらず、21-15で押し切った。

 試合後、パートナーの山崎選手は「うれしいです」とよろこび、「紗李奈ちゃんが本当に頑張った。あの点差から勝ち切れたのは、紗李奈ちゃんのおかげ」と里見選手の健闘をたたえた。また、「相手のタッチが早く、私たちの持ち味のローテーションをさせてもらえないくらいでした。そこをどうしていくかが今後の課題」とパラリンピック本番を見据えた。

 ホームの強みもあった。ペアが得点を重ねるたびに、客席からの声援は、うねるように次第に大きくなっていった。山崎選手は「応援の声は耳に届いていました。応援を力に変えてプレーしました」と話した。

鈴木選手、脚力強化で3連覇

 SU5の鈴木選手は女子シングルスで2年振りにヤン・チウシャ選手を下した。1セットを先取したあと、「ファイナル(セット)に持ち込みたくない」と思い、「相手のコースを考えながら打球を返した」という鈴木選手が粘り強いラリーで22-20と接戦を制した。

3連覇を果たし、観客席からの声援に応える鈴木亜弥子選手
3連覇を果たし、観客席からの声援に応える鈴木亜弥子選手
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 鈴木選手は8月に行われた世界選手権の決勝でヤン選手に敗れている。そのときの敗戦を「あともう一歩だった」と分析し、足の強化を課題にして、ランニング時間を増やすなど、対策を立ててきた。

 試合では強弱のあるスマッシュを意識したという。「後ろ、後ろ(に打ち込む打球)で押して、前に落とす」など緩急をつけた攻めでライバルの追撃をかわした。

強打を放つ鈴木亜弥子選手
強打を放つ鈴木亜弥子選手
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 会場の応援で名前をコールされていた鈴木選手は「応援がありがたかった。パワーになった」と話し、「(パラリンピック本番と)同じ会場で勝てたことが自信につながる」と振り返った。

ヤン・チウシャ選手は、鈴木亜弥子選手との決勝戦で粘り強いラリーを見せた
ヤン・チウシャ選手は、鈴木亜弥子選手との決勝戦で粘り強いラリーを見せた
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初の正式競技で注目

 SU5男子シングルスで今井大湧(たいよう)選手(21、日体大)は準決勝で、今大会優勝を果たしたチー・リクハウ選手(31、マレーシア)と対戦した。互いに攻撃的な打ち合いを演じたが、ゲームカウント0-2で敗れた。

躍動する今井大湧選手
躍動する今井大湧選手
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 今井選手は「自分のミスで、相手にラリーの主導権を握られた」と悔しそうに振り返った。東京パラリンピック本番と同じ会場でプレーした感想は、「空気感が違い、いつもより緊張した。感触としてはやりやすい」とした。

 チー選手は注目選手について問われると、真っ先に今井選手の名前を挙げた。「よく対戦するが、まだ経験が少ない選手。新しいライバルだと思っている」とコメント。「パラリンピックでは、来場してくれたみなさんに、自分の持ち味である攻撃的なプレーを見に来てほしい」と話した。

SU5男子シングルスで優勝した、マレーシアのチー・リクハウ選手
SU5男子シングルスで優勝した、マレーシアのチー・リクハウ選手
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 チー選手に決勝で敗れたスーリョ・ヌグロホ選手(24、インドネシア)も、国際大会で今井選手と対戦している。今井選手について「メンタルに不安があるが、さらに経験を積んだら強い」と評価。「東京パラリンピックでは、子供たちの手本となれるように、楽しみながらプレーしたい」

SU5男子シングルスで準優勝した、インドネシアのスーリョ・ヌグロホ選手
SU5男子シングルスで準優勝した、インドネシアのスーリョ・ヌグロホ選手
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 パラバドミントンは、2020年の東京パラリンピックで初の正式競技となったことで、注目を集めている。パラリンピックと同会場で行われた今大会は、東京パラリンピックのテストイベントとしての側面もあった。

 会場について感想を問うと、チー選手、スーリョ選手ともに、照明が強すぎることを挙げた。また、体育館端に設けられたサイドコートでは、風の影響が強すぎるという。床の材質や、会場の広さは「申し分ない」と太鼓判を押した。

けがから復帰の豊田選手は3位

 SU5女子シングルスの豊田まみ子選手(27、ヨネックス)は、準決勝で鈴木亜弥子選手に0-2(21-12、21-8)で敗れ、銅メダルの結果となった。豊田選手は昨年9月の練習で足をけがしてしまい、7カ月のブランクを経て今年3月の国際大会にダブルスで復帰。今大会で、海外選手の上々な仕上がりの体を目の当たりにした豊田選手は、「けがを気にして、今までは思い切ってトレーニングができなかった。これからはしっかり体作りをしたい」と東京パラリンピックを見据えた。

豊田まみ子選手は鈴木亜弥子選手に敗れた試合を振り返り、「ふがいない。ミスが多かった」と唇をかんだ
豊田まみ子選手は鈴木亜弥子選手に敗れた試合を振り返り、「ふがいない。ミスが多かった」と唇をかんだ
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SL4女子シングルスで準優勝した藤野遼(はるか)選手。「パラリンピックの決勝で、(今大会優勝した中国人選手の)チェン・フーファンと当たるのが夢」
SL4女子シングルスで準優勝した藤野遼(はるか)選手。「パラリンピックの決勝で、(今大会優勝した中国人選手の)チェン・フーファンと当たるのが夢」
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WH2男子シングルス3位の梶原大暉選手。今大会、同クラスの渡辺敦也選手に公式戦初勝利を収めた
WH2男子シングルス3位の梶原大暉選手。今大会、同クラスの渡辺敦也選手に公式戦初勝利を収めた
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車いすのクラスではなく、あえて義足使用でSL3男子シングルスを選んだ藤原(ふじはら)大輔選手は「義足の自分がプレーすることで、義足でもできることがあると、みなさんに知ってほしい」と力を込めた
車いすのクラスではなく、あえて義足使用でSL3男子シングルスを選んだ藤原(ふじはら)大輔選手は「義足の自分がプレーすることで、義足でもできることがあると、みなさんに知ってほしい」と力を込めた
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【パラバドミントン 6つのクラス分け】

・車いすは、腹筋がきくWH2と、きかないWH1の2クラスに分かれる。

・立位は、4クラス。下肢障害のSL3、SL4では、SL3の方が体感のバランスが悪いなど障害の程度が重い。切断やまひなどの上肢障害はSU5、低身長症はSS6。(フジテレビ)

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