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【ラグビーを書く】172センチの果敢で獰猛な私的MVP 別府育郎

イングランド-南アフリカ 前半、南アフリカのデクラークにタックルを受けるイングランドのB・ブニポラ=2日、横浜の日産スタジアム
イングランド-南アフリカ 前半、南アフリカのデクラークにタックルを受けるイングランドのB・ブニポラ=2日、横浜の日産スタジアム
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 強大なFWの後方で配球し、左足から自在のキックでFWを前進させる。相手の9、10番を狙った獰猛(どうもう)なファースト・タックラーとしての突出ぶりは日本戦と同様だったが、彼のプレーはそれだけではなかった。

 密集サイドの巨漢FWの突進に真正面からタックルを突き刺す。時に20センチ以上も大きな相手の胸ぐらをつかんでにらみ合う。味方のDFラインの穴を見つけて金色の長髪をなびかせて駆け回り、左タッチライン際でタックルをした次のシーンでは右サイドの穴を埋めている。驚くべきはその運動量であり、危機を察知して素早く動く嗅覚だった。

 だからこそ、2列、3列目に2メートルの選手が並ぶ「フィジカル・モンスター」軍団の中で戦う場所を得られているのだろう。

 デクラークだけではない。後半33分に脅威のステップと爆発的な加速でとどめのトライを奪った右ウイングのコルビは170センチ。終盤にデクラークに代わった俊敏な控えのスクラムハーフのH・ヤンチースは160センチしかない。自らの特長を生かせば小兵にも役目はある。居場所はある。それがラグビーなのだろう。

 「小さな子供たちに勇気を与える」。デクラークはかねて、それが自分の使命であると話している。南アは異なる人種、文化、言語の選手の融合体であるとともに、特異な個性の集合体でもあった。

 チームの象徴は、南ア初の黒人主将であるコリシである。2019年の年間MVPは2メートルの南アのフランカー、デュトイに贈られた。だがあえて今大会の私的MVPを選ばせてもらえれば、それはデクラークだったのではないか。彼が今大会を象徴する選手の一人だったことは間違いない。

 優勝が決まった瞬間、コルビはベンチに下がっていたデクラークに飛びつくように抱きつき、屈強なFWたちは2人を担ぎ上げ、おもちゃのように軽々と振り回した。涙が止まらない主将のコリシを尻目に、デクラークは満面の笑顔ではしゃぎ、ピッチを駆け回っていた。それが、44日間に及んだ興奮の大会のフィナーレのシーンだった。(別府育郎)

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