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【井崎脩五郎のおもしろ競馬学】空を飛んだディープ、24完歩の衝撃

勝ってディープインパクトの首筋を撫でる武豊騎手=平成18年12月24日、中山競馬場(今野顕撮影)
勝ってディープインパクトの首筋を撫でる武豊騎手=平成18年12月24日、中山競馬場(今野顕撮影)

 ディープインパクトの死は、スポーツ紙のみならず、一般紙でも、テレビの一般ニュースでも報じられた。後方一気のその勝ちっぷり。無敗での3冠制覇。そして種牡馬(しゅぼば)としての大成功。すべてが格別のインパクトを持った馬だった。頸椎(けいつい)の骨折が判明し、7月30日にやむなく安楽死。17歳だった。

 (この馬は、ただ者じゃないかも…)。多くの競馬ファンが、ディープインパクトの尋常ではない強さに気付いたのは、デビュー2戦目の若駒Sだった。後方から大外をまくって出て、直線で一気に突き抜けるその駆けっぷりが、まるで空を飛んでいるように見えたのだ。あのとき、(目の錯覚じゃないよなあ…)と念のために、ビデオで確かめてみた。するとディープインパクトは、ラストの200メートルを24完歩で走っていたのである。

 馬は、走るとき4本の脚がひとめぐり地べたに着いたことをもって1歩(=1完歩)と数えるのだが、それまで、一流馬でもラストの200メートルは26完歩どまりだった。それをディープインパクトは24完歩で突き抜けていたのである。空を飛ぶように見えたのは、そのためだった。

 200メートルを24完歩ということは、1完歩あたり、8メートル33センチである。

 これに対し、200メートルを26完歩だと、1完歩あたり7メートル69センチ。

 その差、じつに1完歩で64センチ。

 これだけ差があると、ディープインパクトは、一流馬が相手でも、たとえば10完歩で6メートル40センチも差をつけてしまうのだ。20完歩なら12メートル80センチ。

 これでは、ディープインパクトに、他馬が根こそぎかわされてしまうのは、当たり前だった。

 これほどの名馬を担当した、市川明彦厩務員(きゅうむいん)の心労は大変なものだったと思う。菊花賞で3冠を達成した瞬間、市川さんに向かって他馬の厩務員全員から「よかったなあ」と声と拍手がわき起こった。「こんなシーンは初めて見ました」と、その場に居合わせた元ジョッキーの細江純子さんから聞いたエピソードも、忘れられない。ディープの血はこれからも日本競馬を変えていくと思う。(競馬コラムニスト)

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