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【月刊パラスポーツ】やり投げ・斎藤由希子

やりの長さは2メートル30センチ、重さ600グラム。40度上へ美しい放物線を描くイメージで投げる=福島市古川
やりの長さは2メートル30センチ、重さ600グラム。40度上へ美しい放物線を描くイメージで投げる=福島市古川

■被災地から目指す「東京」

 8年前のあの日。生まれ育った宮城県気仙沼市を東日本大震災の地震と津波が襲った。当時、高校2年生。高台の校舎から、津波が家屋や人が乗った車を襲い、渦巻く海が船をのみ込むのを見た。友人たちはもちろん、先生も声を上げて泣いていた。

 「その時は必死で。先生まで泣いてどうするんだ、って思いましたね。けど、一夜明けて事の重大さに気づきました」。家族は全員無事だったが、会えたのは2週間後。自宅は流され半年間を避難所で過ごした。

 生まれたときから左手の肘から先がない。でも、小さいころから活発でスポーツ好き。そして明るく、負けず嫌い。3人姉弟の長女で、笑顔の裏に強い責任感ものぞく。

 小学6年生の時に父親を急病で亡くした。それからは母親の志津子さん(50)が女手ひとつで3人の子供を育ててくれた。「自分がしっかりしなきゃ。苦労をかけたお母さんの自慢の娘になりたいって、いつも思っています」

 投擲(とうてき)種目を始めたのは中学1年生の時。陸上部の顧問でもあった担任の先生が、ドッジボールをする姿を見て誘ってくれた。バスケットボールやバレーボールは片手では難しい。でも、砲丸投げならできる。パワーには自信もあった。

 以来、競技を続け、避難所での生活中も練習するほど真剣に打ち込んだ。大学時代には、砲丸投げでF46クラス(切断など)の世界新記録(12メートル47センチ)を出し、まだ破られていない。しかし、出場を目指す2020年東京パラリンピックの砲丸投げに自身のクラスはなかった。

 今は競技をやり投げ(F46クラス)に絞って出場を狙う日々。コーチは、大学で陸上部の先輩だった夫、恭一さん(28)=会社員=だ。やり投げでは挑戦者の立場。1日、日本パラ陸上競技連盟は、11月にドバイで行われる国際大会の派遣指定記録を33メートル42センチと発表した。自己ベストは32メートル91センチ。51センチ足りない。

 しかし、「これから出場する大会は、全て自己ベストを更新するつもりで臨む」と前を向く。次の大きな試合は、5月に北京で行われる。目指すは35メートルだ。

 「今まで障害や震災などを通していろいろな経験をしてきた。さらにキャリアを積んで、いつか、次世代の子供たちに自分の話ができるような立場になるのが夢」と目を輝かせる。そのためにも、東京パラリンピックの大舞台には必ず立つつもりだ。(写真報道局 松本健吾)

【プロフィル】斎藤由希子

 さいとう・ゆきこ 1993年8月2日生まれ。25歳。宮城県気仙沼市出身。私立気仙沼女子高、仙台大卒。福島市を拠点に活動。趣味は釣り、家庭菜園。特技は金魚すくい。座右の銘は「日進月歩」「笑う門には福来る」。SMBC日興証券(東京都千代田区)所属。

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