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日本メダルラッシュ!パラバドミントン9種目でV、鈴木2冠&山崎3冠

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 東京パラリンピックで初めて正式種目になるパラバドミントン。9月26~30日、東京・町田で14カ国109人が出場した「ヒューリック・ダイハツ JAPAN パラバドミントン国際大会2018」が行われ、5日間で延べ5600人の観客が熱戦に声援を送った。

パラバドミントン国際大会が行われた東京・町田の町田市立総合体育館=9月30日
パラバドミントン国際大会が行われた東京・町田の町田市立総合体育館=9月30日

 パラバドミントンは、大きく分けて車いすと立位があり、障害の程度により車いすが2クラス、立位が4クラスの計6クラスに分かれている。日本からは全てのクラスの種目に計33選手が出場した。最終日に行われた各種目の決勝で日本は、シングルスとダブルス、立ってプレーする立位と車いすの種目を合わせ、9種目で金メダルを獲得。ホームの声援を背にSU5(上肢障害)の鈴木亜弥子選手(七十七銀行)やWH2(車いす)の山崎悠麻選手(NTT都市開発)らが活躍した。10月6日に迫ったインドネシアで開催されるアジアパラ競技大会2018、そして2020年東京パラリンピックに向けて多くの選手が手応えを感じたようだった。

世界1位の女王が圧倒

 日本女子のエースが力を見せつけた。障害クラスSL4(下肢障害)・SU5の選手が出場する女子シングルス決勝で、世界ランキング1位の鈴木選手が同5位の杉野明子選手(SU5、ヤフー)を21-15、21-5で圧倒。連覇を果たし、2020年の金メダルに一番近い選手という印象を強めた。

鈴木亜弥子選手
鈴木亜弥子選手

 「絶対に勝ちたい。なるべく点を与えず、体力を使わずに勝ちたい」。女王・鈴木選手の勝利を突き詰める姿勢がスコア差に表れたようだった。

 男女の様々な種目の決勝戦が行われたこの日の朝、杉野選手は第1試合に組まれた障害クラスSL3(下肢障害)-SU5のミックスダブルス決勝に出場し、接戦の末にタイのペアを破った。鈴木選手と杉野選手が戦った女子シングルス決勝は第3試合。「2セット目の最初の方で、杉野さんが疲れているのが分かりました」。鈴木選手は、杉野選手の心身の疲れを見逃さなかった。

 障害クラスSU5のシングルスのルールでは、健常者のバドミントンと同じようにコート全面を使う。鈴木選手はコートの四隅を突き、杉野選手に足を使わせた。

 前後左右に振り回された相手は、余裕のない体勢での返球を強いられるので、自然と配球が読みやすくなる。相手側のミスも誘えるだろう。多くのスポーツに共通するセオリーだが、実現するのは簡単ではない。ワールドクラスの実力者同士の試合であればなおさらだ。

 しかし鈴木選手は正確なコントロール力を武器に追い詰め、隙のない試合運びで第2セットを制して優勝。さらに、その後に行われた第5試合、障害クラスSL3-SU5の女子ダブルス決勝に山田麻美選手(SL3、LAVA International)と出場して勝利し、単複2冠を達成した。厳しい戦いが続く1日の流れを把握し、体力を上手く配分するベテランならではの巧みさが光った。

 試合後、鈴木選手は「シングルスとダブルスでは配球が違うので、頭の切り替えが難しいです」。また、違う障害クラスの選手と試合をする機会もあり、その度に作戦を変えるとも話した。この最善の結果を引き寄せる“修正力”の高さが、鈴木選手の強みなのかもしれない。

勝敗を分けた“あっけない”一発

 立位の女王が2冠なら車いすの女王は3冠だ。山崎選手は単複と、韓国のリ・サムソップ選手と組んだミックスダブルスで優勝した。「3種目に出るからには(金メダルを)3個取りたいと思って挑んだ大会なので、本当に嬉しい」と目を赤くして笑みをこぼす。激戦を乗り越えた満足感がにじみ出ていた。

 決勝日の最後に行われた障害クラスWH1-WH2(ともに車いす)のミックスダブルス決勝は19-21、21-14、21-15のシーソーゲームだった。台風24号の接近で天候が荒れる中、意地と意地のぶつかり合いが会場で吹き荒れた。

WH1-WH2のミックスダブルスで優勝した山崎悠麻選手とリ・サムソップ選手
WH1-WH2のミックスダブルスで優勝した山崎悠麻選手とリ・サムソップ選手

 山崎選手とペアを組んだ男子の単複で世界ランキング1位のリ・サムソップ選手(WH1、韓国)はフィジカルに優れ、少しでも甘いコースにシャトルが飛んで来ると鋭いスイングでコートに突き刺さるようなショットを返す。山崎選手も高く打ち上げて深い位置に返すクリアでラリーを組み立て、男子の攻撃力を生かしながら、車いすダブルスで設けられるネット近くのアウトエリアぎりぎりを狙ったドロップで揺さぶりをかける。しかし小倉理恵選手(WH2、チーム ブリヂストン)・村山浩選手(WH1、パシフィック)組の守りは固く、最終の第3セットは劣勢のまま後半戦にもつれ込んだ。

 勝敗を分けたのはリードされた11-14の場面で、山崎選手が放った奇襲の一発だった。小倉選手のサーブに対し、コート右側を守っていた山崎選手が、まっすぐ押し出すように短くレシーブ。高い弾道のレシーブを予想していたためか、村山選手は完全にタイミングを外され、シャトルはあっけないほど簡単にコートに落ちた。

 これで完全に流れが変わった。勢いに乗る山崎選手のペアは反撃を許さず、ここから8連続で得点を重ねてマッチポイントを迎える。小倉選手も相手コートにねじ込む気迫の返球で1ポイントを返すが勢いを止められず、まさかの大逆転を許す結果となった。

 最高の結果で大会を終えた山崎選手はトレーニングの成果が出たと勝因を話す。

「体づくりをメインに1年間取り組んできました。体幹を鍛えたことで前に出るスピードなどが早くなり、今までのチェアワークでは間に合わなかったコースも取れるようになりました」

WH1-WH2女子ダブルス決勝で、大きくのけ反るフォームで打つ山崎悠麻選手。右奥の里見紗李奈選手(WH1、パシフィック)と組み、小倉理恵選手と福家育美選手(WH1、ダイハツ工業)のペアを21-9、21-15で破った
WH1-WH2女子ダブルス決勝で、大きくのけ反るフォームで打つ山崎悠麻選手。右奥の里見紗李奈選手(WH1、パシフィック)と組み、小倉理恵選手と福家育美選手(WH1、ダイハツ工業)のペアを21-9、21-15で破った

 パラバドミントンならではの鍛え方も模索した。障害クラスWH2などの背もたれのない競技用車いすに乗る選手らは、胸が天井を向くほど大きく上体をのけ反らせて、身体から離れた打点に対応する技術を持つ。山崎選手は、利き手側の右肩をトレーナーに押さえてもらい、のけ反った状態でから起き上がる「腹筋の車いすバージョン」(山崎選手)に力を入れ、ショットの安定性や、次の行動に移るスピードを高める努力をしたという。

 次の目標はアジアパラ競技大会。「ミスなく丁寧にプレーしていきたい」と万全の調子でアジアのライバルたちに臨む。

声援が選手の力に

 日本女子のメダルラッシュに沸いた今大会だが、試合内容では男子も負けていない。障害クラスSU5の今井大湧選手(いまい・たいよう、日本体育大学バドミントン部)はポーランドのバルトゥオメイ・ムルズ選手と対戦したシングルス決勝で、ジャンピングスマッシュを始めとした身体能力の高さを生かすプレーで攻め続け、21-14、21-11のストレート勝ちで優勝を飾った。

ジャンピングスマッシュを打つ今井大湧選手
ジャンピングスマッシュを打つ今井大湧選手

 ポイントを奪う度に雄叫びを上げる今井選手の姿が印象的だったが、試合後、本人は「普段は声を出さないけど、皆が応援してくれるから」と観客の声に後押しされた結果だったと明かした。

 「思ったより大勢の観客が来てくれて、応援を力に変えられました。2020年の東京パラリンピックもこれくらい盛り上がってくれれば」。大会最終日、9月30日の来場者数は1461人だった。東京パラリンピック本番では、より多くの声援が日本選手を支えるに違いない。

雄叫びで自身を鼓舞したという今井大湧選手
雄叫びで自身を鼓舞したという今井大湧選手

 障害クラスSL3の藤原大輔選手(ふじはら・だいすけ、LINE)は、シングルス決勝で英国のダニエル・ベセル選手に11-21、8-21のストレート負けを喫したが、タイのシリポーン・テーマローン選手と組んで臨んだ障害クラスSL3・SL4の男子ダブルス決勝ではドイツのヤン・ニックラス・ポット選手とパスカル・ウォルター選手のペアを21-14、18-21、21-10で破った。

 東京パラリンピックのパラバドミントン競技では、立位の男子ダブルスは実施されない。しかしその分、国の枠にとらわれずに、別の国の選手と組むことができる自由度の高さがるという。

ダブルス決勝でシャトルに飛びつく藤原大輔選手。左奥がシリポーン・テーマローン選手
ダブルス決勝でシャトルに飛びつく藤原大輔選手。左奥がシリポーン・テーマローン選手

「普段、健常者のレベルの高いチームで練習をしているので、彼のようにスピードがずば抜けて高い選手と組めるのは嬉しい」(藤原選手)

 パラリンピックは世界中のパラアスリートが集う大舞台に違いないが、そこ以外でもトップレベルの試合が繰り広げられている。藤原選手の言葉はパラバドミントンのみならず、パラスポーツ全体の幅の広さを感じさせた。

(世界ランキングはすべて2018年8月16日付)

(フジテレビ)

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