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【舞の海の相撲俵論】いまも胸に残る師匠の心眼

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【舞の海の相撲俵論】
いまも胸に残る師匠の心眼

舞の海秀平さん(荻窪佳撮影) 舞の海秀平さん(荻窪佳撮影)

 親御さんから預かった大切な命を失い、師匠はこれでもかというほど自らを責めた。仏壇の前で寝込み、10日以上も稽古場に姿を見せず「俺はもう部屋を辞める」と言って聞かなかったという。おかみさんに「残された弟子たちもいるんだから」と諭され、何とか翻意した。

 龍興山と同い年の自分が入門を決意し、出羽海部屋で稽古を始めたのは、まだ部屋全体が悲しみにくれていた頃だった。

 そんな事情も知らず、しばらくしてから酔った勢いで師匠に詰め寄ったことがある。どうして一度目の新弟子検査で助けてくれなかったのか、と。

 「お前はせっかく山形の高校に就職が決まってただろう。そんな小さい体で何も苦労することはないじゃないか。でもな、本当にやる気があるんだったら、一度落ちても必ずまた戻ってくると思ってたんだ」

 がつんと頭を殴られたような衝撃が走った。この人は目先のことだけではなく、1人の若者の先々までを長く深く考えてくれていたんだと知り、熱い感謝の思いが芽生えた。若くして未来を失った龍興山の姿が自分と重なって見えていたのかもしれない。(元小結 舞の海秀平)

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