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W杯崩壊の危機 汚職事件で揺れるFIFA、ブラッター会長5選で憤懣の欧州勢にボイコット案が浮上

汚職事件の渦中でも、トップの責任を問う声は組織全体としては高まらず、アフリカ連盟(54協会)やアジア連盟(46協会)、南米連盟(10協会)などに広がるブラッター氏の支持基盤は揺るがなかった。重要事項を決める総会は、サッカー大国のドイツやブラジルも、小国も等しく1票を持つ。サッカー界で権力を握るには、多数を占める「非欧州」の支持が不可欠という「FIFAの民主主義」を、ブラッター氏は事務局長として仕えた前任会長のジョアン・アベランジェ氏(99)=ブラジル、会長在任1974~98年=から学んでいた。
欧州出身者以外で初めてFIFA会長になったアベランジェ氏はW杯の出場枠を16から現在の32まで広げ、出場枠を欧州以外に優先的に配分して支持を集めた。アジア枠はこの間、1から4.5に増えている。アベランジェ氏に後継指名されたブラッター氏はその票田を受け継ぐとともに、W杯で稼ぎ出した資金を、サッカー関連のインフラが遅れている協会に援助する仕組みを確立、権力基盤をさらに強固にした。この仕組みこそが汚職を生む温床の一つとなったのだが、FIFAの資金を頼りにする多くの協会は、不正撲滅や組織刷新よりも確実に援助を期待できる体制の継続を選択したわけである。