劣勢をはね返した稀勢の里「しっかりやりました」 見えてきた序盤の“無傷の突破”

大相撲秋場所
魁聖を土俵際まで追い詰める稀勢の里=両国国技館(撮影・今野顕)

 両国国技館の土俵でまたしても“稀勢の里劇場”が繰り広げられた。約1分に及ぶ魁聖との大相撲で、3日連続となる劣勢をはね返しての逆転勝ち。進退を懸けている場所で貴重な白星を積み上げ、「しっかりやりました」と息をついた。

 けんか四つの相手に差し勝って左をねじ込んだまではいい。だが、土俵中央で胸を合わせて先に上手を取ったのは魁聖。土俵を不穏な空気が覆う中、相手の上手を切り、逆に上手を取って振り払い、最後は195センチ、207キロの巨漢を寄り切った。

 魁聖とは過去11戦全勝と問題にしてこなかった。魁聖は横綱戦32連敗中という不名誉な記録も続けていた。ただ、稀勢の里の横綱昇進後は初対戦。心強いデータがあるとはいえ長期休場明けということを考えると、かえって不気味だったかもしれない。

 2、3日目は絶体絶命の窮地から何とか星を拾った。この日もヒヤリとさせながら勝利につなげる千両役者ぶりに満員御礼の場内は大興奮。しかし、連日の平幕相手の熱戦に、横綱としての胸中は複雑だろう。

 忸怩(じくじ)たる思いがあっても、今場所で求められているのは内容ではなく結果だ。5日目の正代戦に向け、「1日1番、集中してやっていきたい」。カギを握るとみられた序盤の“無傷の突破”がみえてきた。(奥山次郎)