ブーイングから歓声に 異例の「謝罪」表彰式 大坂なおみ20歳の振る舞いに世界感動

全米テニス
 全米オープンテニスの女子シングルスを初制覇し、感極まる大坂なおみ。右はセリーナ・ウィリアムズ=8日、ニューヨーク(ゲッティ=共同)

 涙声にも聞こえる英語の優勝スピーチは謝罪から始まった。「みんながセリーナを応援していたことは知っています。こんな結果になってごめんなさい」。テニスの四大大会、全米オープンで米国のセリーナ・ウィリアムズ(36)を破り、日本勢初の偉業を達成した大坂なおみ(20)の言葉に会場は静まりかえった。

 「あなたとプレーすることができて感謝しています」。闘志をむき出しにして打ち合った。力と頭脳で打ち破った相手に敬意を払い、サッと頭を下げた。控えめな立ち振る舞いは、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターにいた観客だけでなく、未明のテレビ中継やニュースでその様子を見た日本の人々の心をつかんだ。

 大坂が所属する日清食品東京本社(新宿区)。地下ホールの大型スクリーンで声援を送った男性社員(35)は「感動した。北海道の地震や西日本豪雨で苦しんでいる日本に元気を与えてくれた」と語った。

 実際、大坂は決勝進出を決めた試合後、自身のツイッターに日本語で「この度の台風、地震災害に対し心よりお見舞い申し上げます」とつぶやき、決勝後のWOWOWのインタビューでも「みなさんの無事をお祈りしています」と気遣った。夢の大舞台に立っても“故郷”を思い、被災地に寄り添ってきた。

 ハイチ系米国人の父親と日本人の母親の間に生まれ、3歳まで大阪で過ごした。その時の記憶はないが、自らの名前の読み方が同じであることには強い印象を抱いたという。日米双方の国籍を持つが、「日本の文化のすべてが好き」。登録は日本を選択し続ける。

 たどたどしい日本語だが、語り口は一生懸命だ。大坂を知る日本人女性によれば、14歳のころまでほとんど日本語は話せず、付き添う母親が通訳に入っていたほどだった。

 3歳で渡米。父の指導の下、本格的にテニスを始めた。15歳でプロに転向。2016年の全豪オープン。四大大会初挑戦で3回戦進出を果たすなどステップを踏んできた。

 決勝後、母親と抱き合った。金銭的に潤沢ではない時期もあったが、支えてくれた。「彼女(母親)は私のために多くの犠牲を払ってくれた」。素直に親に感謝する姿も共感を呼んだ。

 幼少時代からの憧れだったセリーナに勝って喝采を浴び、抱擁した瞬間を問われると、「私はまた小さな子供に戻った気分になった」と振り返った。故郷、母親、憧れ…。頬を伝う涙をタオルで拭った。郷愁感さえただよう20歳の初々しい力強さは、日本中に明るい力を届けた。

 (ニューヨーク 上塚真由、上田直輝)