「1ミリでも縮める」 初得点にも慢心なし 横浜Mに移籍の17歳久保建英

Jリーグ
神戸戦の前半、イニエスタ(右)と競り合う横浜Mの久保=8月26日、ノエビアスタジアム神戸(甘利慈撮影)

 将来の日本サッカーを担う「天才」が再スタートを切った。U-19(19歳以下)日本代表MFの久保建英がJ1・FC東京から横浜Mへ期限付き移籍。「今できる最大限の成長を考えた」と覚悟の決断だった。10カ月が経過したプロ生活に苦しみながらも、自身のJ1初得点を奪うなど結果を出した17歳は成長を期している。

 待望のゴールは久保が下部組織に所属していたスペインの強豪、バルセロナの先輩であるイニエスタの前で決めた。

 8月26日に行われた第24節・神戸戦だった。後半11分、DF松原健が右サイドから出したパスを受けると、相手ペナルティーエリア内でワントラップ。浮いた球の落ち際を見計らって左足を振り抜いた。

 「緊張もあったけど、落ち着いて決めるだけだった」。必死に手を伸ばす相手GKの手をかすめ、サイドネットに突き刺さると、残留争いにあるチームの中で抜擢(ばってき)してくれたポステコグルー監督に駆け寄り、喜びを爆発させた。

 2004年にFW森本貴幸(当時、東京V)の15歳11カ月28日に次ぐ史上2番目に若い17歳2カ月22日での得点だった。だが、久保にとっては記録以上の意味があった。

 15歳5カ月1日だった16年11月にFC東京U-23(23歳以下、J3)でJリーグ史上最年少出場。17年4月には15歳10カ月11日で同最年少得点し、今年3月にはリーグカップ戦での最年少得点記録を16歳9カ月10日に更新した。

 そんなライジングスターも今季は苦しんでいた。「少しでもチームに貢献できるように考えていた」が、守備や球際の強さ、攻守のハードワークを求めるFC東京の長谷川監督の下で、J1は途中出場の4試合にとどまり、J3が主戦場になっていた。

 「自分のことは自分で決める。新たなチャレンジをしたい」。決意を込めた移籍だったからこそ、得点という結果を残し、安堵(あんど)の表情が漏れた。

 「自分で新たな決断をして、結果が出なかったら『やっぱりダメじゃん』っていわれるのは明らかだったから」

 だが、新たな冒険は順風満帆というわけではない。続く順延されていた18節・清水戦(8月29日)も先発したが無得点。連続得点どころかシュートもゼロと不完全燃焼に終わった。

 前半8分の絶好のチャンスではFWビエイラがノーマークだった久保にパスを出さず、好機を逃す。「サポートはできるようにしていた。あとはウーゴ(・ビエイラ)の判断」とエースストライカーのプレーに理解を示しながらも、「ピッチは滑りやすかった。(こぼれ球とか)チャンスはあるかもと思っていた」と、虎視眈々(たんたん)とゴールを狙っていたことを明かした。

 この試合では評価が高いトラップでミスが目立った。「最近は多い。自分の持ち味が出せていないのが現状で、原因は分からない」と久保。新天地で産みの苦しみを味わっている。

 スペイン代表で国際タイトル3連覇を果たしたイニエスタの前で記録した得点を報道陣に聞かれた久保は「(イニエスタとは)天と地の差がある」と謙遜しつつ「きょうのゴールで1ミリでも縮められたら」と自分に言い聞かせるように語った。

 17歳で選択した大きな岐路。久保はもがきながら、世界との距離を埋めようとしている。