日本社会を変える体育館 スポーツジャーナリスト・増田明美

思ふことあり
東京都品川区に完成したパラスポーツ専用の体育館「日本財団パラアリーナ」=1日

 ゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)の船の科学館駅から真新しい体育館が見える。6月1日にオープンしたばかりの「日本財団パラアリーナ」だ。「パラリンピックで日本を変える」という考えの下、日本財団は3年前にパラリンピックサポートセンターを開設している。さて、どんな感じか、見にいくことに。

 これまでパラリンピックの選手から聞こえてきたのが「練習場の確保に苦労している」という声。体育館で練習する車いすバスケットやウィルチェアラグビーは「床が傷つく」「タイヤの跡や(滑り止めの)マツヤニで汚れる」と、使用を認めない所がまだ多い。

 使用できても時間内に掃除をしなければならず、借りた3時間のうち1時間以上が掃除の時間になってしまう。貸し出しが深夜に限られる場合もあり、車を運転できないジュニア選手が競技に参加できない一つの障壁にもなっている。

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 日本財団パラアリーナに入ると、エントランスホールに香取慎吾さんの彩り豊かな原画を基にした、レゴビルダー、三井淳平さんの作品が。温かさに包み込まれた。その横には、「i enjoy 楽しむ人は強い」という言葉。

 案内してくださったパラリンピックサポートセンターの金子知史さんによると、「床と天井を黒く、壁を白くして弱視の方も歩きやすくなっています」。車いす選手にとって逆にバリアになる点字ブロック。それを必要最小限にしつつ視覚障害者に配慮するのに苦心されたそうだ。

 アリーナはブラインドサッカー1面、車いすバスケット2面、ボッチャ8面が取れる。涼しい。「室内は一年を通して18度。汗をかくことができず、体温調整できない選手もいますからね」と金子さん。トイレもシャワーも車いすのまま使え、半身まひにも対応できるよう左右対称に。選手の声を生かした、日本で最先端の障害者スポーツ専用施設だと感じた。

 この施設、2020年を目前に控え、時間をかけてはいられないと、約6カ月で完成させたそうだ。この日も車いすフェンシング日本代表の合宿が行われていた。トレーニングルームには本番で使われるものと同じパワーリフティング用の機器をはじめ、多くのマシンがある。そこに「中外製薬」のシールが。パラアリーナの趣旨に賛同して寄付してくれたそうだ。

 民間のスピーディーな意思決定がなければ、こんなに早くは実現しなかっただろう。約8億円の建設費を拠出した日本財団はもとより、博物館用の都有地に、期間限定とはいえ、体育館の建設を認めた東京都にも拍手を送りたい。

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 先進諸国では、地域の体育館を健常者、障害者が分け隔てなく使用し、トップ選手はパラ専用の施設で競技に打ち込む。日本は逆。トップ選手はナショナルトレーニングセンターをシェアしている。地域の体育館は障害者の使用に対応できず、まだ数が少ない障害者スポーツセンターに、というスタンスだ。こんなことでは心のバリアフリーなんて育めない。ダイバーシティー(多様性)社会という言葉を口にするのもはばかられる。

 日本財団パラアリーナでは修学旅行の受け入れも検討されている。子供たちがボッチャや車いすバスケットなどを体験すれば、パラスポーツへの興味は高まるだろう。パラリンピックで社会は変えられると思う。