漫画やアニメでパラスポーツの魅力発信 知名度アップ期待も独特ルールなど課題も

広角レンズ
井上雄彦さんが描き下ろした「TOKYO 2020 パラリンピックジャンプ Vol.1」の表紙イラスト(c)I.T.Planning,Inc.

 3年後の2020年東京パラリンピック開催を前に、漫画やアニメの題材に、パラスポーツ(障害者スポーツ)を取り上げる動きが相次いでいる。集英社は今月、パラスポーツを漫画で特集するムック本を発売。NHKも各種競技の魅力を伝える短編アニメをスタートさせた。過去には、サッカーやバスケなど、漫画やアニメがきっかけで人気に火が付いた競技も多く、パラスポーツの普及や知名度アップにも期待がかかる。(本間英士)

大会1000日前の節目

 東京大会開催の1千日前となる29日、集英社はムック本「TOKYO 2020 パラリンピックジャンプ Vol.1」を発売する。視覚障害のある柔道家をモデルにした「タフ番外編」、ボッチャがテーマの「潜入!ボッチャ」など4編の作品を掲載。車いすテニスのエース、上地結衣選手の競技人生を漫画にした「カミジ!」では、昨年のリオデジャネイロ大会から物語が始まり、東京大会に向けての努力の日々が描かれる。

 これまでほぼ前例のなかったアニメ化も実現した。NHKは今月10日から、短編アニメ「アニ×パラ あなたのヒーローは誰ですか」(BS1)を不定期で放送。視覚障害者の選手らがプレーするブラインドサッカーと、パラ陸上の2競技を映像化した。

 ブラインドサッカー編の原作は、「キャプテン翼」で知られる高橋陽一さんが担当。日本代表が磨き抜いたパスで王者・ブラジルに挑むストーリーで、独特のルールが自然と理解できる作りになっている。「トルネードタイガー」といった必殺技も登場する。

 「報道とドキュメンタリーだけでは魅力を伝えきれないが、アニメを加えることで幅広い層にアプローチできる」(上田和摩チーフプロデューサー)として、今後は紹介する競技数を増やし、総合テレビやEテレでも順次放送する。高橋さんは「(独特のルールなど)パラスポーツは“取っかかり”が難しい。作品をきっかけに、認知度が高まれば」と話す。

 漫画やアニメがきっかけで、スポーツ人気に火が付いたケースはよく知られている。

 高橋さんが昭和56年から手掛ける「キャプテン翼」では、国内のサッカー人気が急上昇し、プロを目指した選手も少なくない。平成2年に始まった井上雄彦さんの「スラムダンク」は、若者のバスケブームを呼び込んだ。

 「漫画やアニメは若年層に人気のあるコンテンツ。次世代を担う方々に、ぜひパラリンピックに関心を持ってもらえれば」。こう語るのは、東京都の安達紀子・パラリンピック部事業推進担当課長。

 都は平成27年度から、パラスポーツへの理解を深めてもらおうと、その魅力を漫画や映像で発信する「Be The HERO」プロジェクトを始めた。都が昨年行った世論調査によると、パラスポーツに「関心がある」と答えた人は全体の58%で前年より13%増えた半面、この1年間に実際に競技会場などで観戦経験のある人は1・3%にとどまっている。

 都は現在、プロジェクト第2弾の新作映像を制作中で、安達さんは「2020年には『会場で応援したい』と思ってもらえるとうれしい」と意気込む。

ヒーローも誕生!?

 一方で、制作における課題も多い。パラスポーツを扱った作品は、車いすバスケをテーマとした井上さんの「リアル」(平成11年開始)などごくわずか。競技のルールが独特なため、取材に多くの時間がかかり、描く際の表現方法も難しいからだ。集英社のムック本の発行人を務める田中純取締役は「以前は『特殊なスポーツ』という認識があり、書き手に身構える意識もあったのではないか」と分析する。

 ただ、近年は新聞やテレビで多く紹介されるようになったこともあり、“風向き”は変わりつつある。「パラスポーツは競技として純粋に魅力的だし、迫力も十分。そう遠くないうちに、『キャプテン翼』の翼くんや『YAWARA!』の柔(やわら)ちゃんのようなヒーロー・ヒロインが生まれてくるのでは」。田中さんは、こう期待を寄せている。