障害を新たな価値に変える ミライロの垣内俊哉社長

月刊パラスポーツ キーパーソンに聞く(2)
ミライロの垣内俊哉社長(川口良介撮影)

 国籍、年齢、性別の違いや障害の有無に関わらず、誰もが使いやすい製品や建物、サービスの設計を意味する「ユニバーサルデザイン」。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まって、日本社会にも本格的に広がり始めた。その普及に取り組んでいるのが、コンサルティング会社のミライロ(大阪市淀川区)だ。設立8年で注目を浴びるようになった垣内俊哉社長(28)に、いまこそ必要な視点を教わった。

 --起業した背景は

 「車いすでもできることは何かと考え、大学に入ってアルバイトでホームページ製作会社の営業を始めたところ、一番成績が良かった。理由は一つ、覚えてもらえるから。『また車いすでの営業が来た、もうそろそろ発注してやるか』と。当時、社長に『いつまで歩けないことをくよくよ言っているんだ。車いすに乗っていることはおまえにとって強みだ。障害があることに誇りを持て』と言われたんです。障害も見方を変えれば強みととらえられる。障害を価値としてとらえる『バリアバリュー』という考え方を広げようと思い、起業しました」

 --なぜユニバーサルデザインは重要なのか

 「バリアフリーという言葉が日本で言われ始めたのは1970年ごろですが、障害者のためという側面が強く、ひとごとと受け止める人が多かった。90年ごろにユニバーサルデザインという言葉が広がり始めました。高齢化が進み、20年のパラリンピックも控え、海外の人も多く日本に足を運ぶ。バリアフリーよりも広い視野で多様性を考えなければいけないのです」

 --環境は整いつつある

 「順調だが、二極化している。何かしなければと思っている人は多いが、障害者への向き合い方は無関心か過剰かのどちらかになりがち。実態を知らないからそうなる。それを『知っている』に変えることが重要。そのためには大人、企業のトップ、国のトップが変わらないと」

 --バリアバリューを広げるには

 「障害があるからこそできることは必ずある。企業には経済的価値につながるユニバーサルデザインの提案を行えば、顧客やリピーターを増やせる。例えば結婚式場なら、高齢者が来られないと機会損失につながる。企業も切(せっ)磋(さ)琢(たく)磨(ま)して大変な状況にある。互いに歩み寄り、価値を作り出す形が必要です」

 --20年までの課題は

 「環境、意識、情報の3つのバリアが存在します。環境は設備の改善、意識はユニバーサルマナーの推進で、解消できます。情報は分からないことがバリア。車いすで利用できる飲食店は5~10%。それにたどり着く術を提供しなければ。誰もが安心して外出できるよう、バリアフリー情報共有アプリ『Bmaps』を普及していきたい。新しい障害者の働き方も実現したい」

 --障害者の働き方とは

 「障害者に調査で協力いただく。『ミライロ・リサーチ』では、製品への意見や店舗の覆面調査を依頼して報酬を支払います。障害者の視点を価値に変え、新しい社会をつくる。企業や街と障害者をつないでいく。多くの障害者に光を当てることができたらと思っています」

 --20年以降に向けて

 「障害者や高齢者は消費者として市場での存在感を増してくる。ビジネスとして取り組むことが大切。企業の成長につなげる一手としてとらえることが取り組みを続けるための根拠となります」

ミライロ 骨形成不全症で車いす生活の垣内俊哉氏が立命館大学在学中の2010年に設立。設備や製品をユニバーサルデザイン化する企画や関連情報の収集、研修事業を行う。ホテルや結婚式場、百貨店、スーパー、霊園と顧客は幅広い。

 東京オリンピック・パラリンピックが決まった13年を「ユニバーサルデザイン元年」と位置づけ、「ユニバーサルマナー検定」として応対を学ぶ研修も開始。合格者は現在約3万人上り、中学校で授業に活用されている。

 「Bmaps」はスマートフォンで情報を投稿でき、車いす利用者の移動に必要な段差の段数や、電動車いすも充電可能な電源の有無、視覚障害者のための電子マネー使用可否などの情報を網羅。健常者にも役に立つ。「ミライロ・リサーチ」は登録者5千人。車いす利用者の意見を反映してクッションを共同製作している。