座談会「道路から首都圏の未来を考える」

日本の持続的成長に向け鍵を握る首都圏道路ネットワーク

首都圏ではいま、道路ネットワークの整備が急ピッチで進められている。3環状と呼ばれる「中央環状線」「外環道(東京外かく環状道路)」「圏央道(首都圏中央連絡自動車道)」のうち、中央環状線が完成し、圏央道や外環道も次々に都心から延びる高速道路とつながり始めている。今後はこの道路ネットワークをどう活用し、首都圏の活性化に生かすかが問われている。これらの整備効果を検証するとともに、首都圏の持続的な発展について関係者と有識者が活発に意見交換した。

参加者

国土交通省 関東地方整備局長 石原康弘氏
東京大学大学院教授 羽藤英二氏
浜銀総合研究所 上席主任研究員 新瀧健一氏
産経新聞東京本社 論説委員 井伊重之

コーディネーター

フリーキャスター・千葉大学客員教授 木場弘子氏

整備が加速する首都圏3環状道路
ストック効果や経済効果も顕著

所要時間の短縮や渋滞緩和を実現
物流の活性化にも着実な効果

木場
本日は、首都圏道路ネットワークをテーマに、皆さまそれぞれの視点からご意見をいただきたい。まずは、石原局長から現在の整備状況、ストック効果、経済効果などについて伺いたい。
石原
3環状道路のうちすでに中央環状線は完成し、圏央道も9割が開通。外環道も6割が開通し、現在は東名高速への接続に向けた工事や、その先の湾岸部の計画具体化の動きが進んでいる。このうち外環道の大泉JCTと東名JCTの間は地上部への影響を小さくするため、大深度の地下空間を活用した世界有数の大断面のトンネル工事となっている。また圏央道は、神奈川県区間で横浜環状南線と横浜湘南道路の2事業を、千葉県区間で大栄JCTと松尾横芝JCTとの間で工事を進めている。
 
 
3環状道路のストック効果については、外環道の三郷南ICから高谷JCTまで開通したことで、通行車両の8割が都心経由から外環道に転換し中央環状の内側の渋滞が3割削減するなど、所要時間の大幅な短縮と首都高の顕著な渋滞緩和効果があがっている。経済活性化では、首都圏の大型物流施設の立地件数が圏央道の開通前後で約1.7倍に増加したとのデータもあり着実に効果が表れている。
石原康弘氏
石原康弘
1962年鹿児島県生まれ。1987年現国土交通省入省。関東地方整備局相武国道工事事務所所長、和歌山県県土整備部長、近畿地方整備局道路部長、大臣官房技術調査課長を経て、2018年7月から現職。

神奈川では物流施設へ投資3割増
製造業の整備投資も2.2倍に

木場
次に、圏央道で北関東経済圏と1本で結ばれた神奈川県側の経済効果をどのように考えるか。
新瀧
神奈川県全体で、運輸業向けの建築物着工予定額が2019年までの5年間で3,590億円投じられ、その前の5年から35%増となり、床面積では毎年東京ドーム10個分の物流施設が誕生している。製造業の設備投資も直近の5年で、その前の5年の2.2倍に増えている。また物流施設もマルチテナント型が増え民間投資が進んでいる。
木場
道路の果たす役割の大きさを改めて実感する。それでは、羽藤先生から首都圏の将来像という観点から、道路ネットワークの果たす役割をお聞きしたい。
羽藤
昭和は放射道路の整備、平成は環状道路の整備が中心だった。その結果、将来の自動運転社会に向けても対応できる環境が生まれ、道路ネットワークを基盤として新しい首都圏像を描ける時代になってきた。また、横浜市やさいたま市など、独立した経済圏や文化を持ち、投資余地が残っている地域もある。高速道路ネットワークがそれらの都市を結びつけ、「展都」と呼ばれる首都が外側に大きく展開していくような都市像は、1局集中への対応や成長のためにも有効ではないか。
井伊
道路の機能そのものも注目され、先ほど話があった神奈川県だけでなく、埼玉県や千葉県でも物流拠点の集積が進んでいて、その物流を道路ネットワークが支えて、私たちの暮らしぶりを変えてきている。さらに、道路ネットワークの整備により交通機関の時間がより正確となり、運行そのものが高度化している点にも注目したい。
木場
道路ネットワークの経済効果では、観光分野へのインパクトも欠かせない要素だ。
石原
2017年に圏央道の千葉県区間が開通したことで、成田空港に着いた外国人観光客が都心を経由せずに日光や那須、世界遺産の富岡製糸場、川越などへ周遊でき、観光コースもできている。さらに、遠方の東北や新潟、長野などへ行くことも可能になってきている。また、3環状道路ではないが、静岡県の清水から富士山方面に行ける中部横断自動車道の整備も進み、山梨県に港ができた形だ。清水港に寄港した国際クルーズ船の乗客数はこの5年で約130倍に増えている。
新瀧
道路整備の間接的に寄与する効果であるが、数字として見ると、神奈川県では圏央道のさがみ縦貫の区間が完成した1年後に小田原城の天守閣入場者数が53年ぶりにピークを更新し、また横須賀市の記念艦「三笠」の来艦者数も51年ぶりの水準を回復している。
新瀧健一氏
新瀧健一
1964年生まれ。慶応大学経済学部卒業後、1987年横浜銀行入行。日本経済研究センター、米国コンファレンスボード出向などを経て、浜銀総合研究所上席主任研究員。神奈川の産業構造や業界動向など地域経済に関わる調査や講演を多数手がける。2006年から、FMヨコハマの情報番組で経済解説コーナーを担当。

提供 国土交通省関東地方整備局