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米政権、イスラエル対応で後手 大使不在のまま情勢急転

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イスラエルへの対応に苦慮するバイデン大統領(ロイター)
イスラエルへの対応に苦慮するバイデン大統領(ロイター)

 【ワシントン=大内清】イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの戦闘が激しさを増す中、バイデン米政権が、事態の沈静化に向けた影響力を発揮できずにいる。バイデン大統領は、トランプ前政権によるイスラエル偏重外交の修正を進めてきたが、それを現地で担う駐イスラエル大使の人選が固まらないうちに今回の危機が勃発。情勢が急速に流動化する中で対応が後手に回っている格好だ。

 歴代米政権にとり、駐イスラエル大使は特別な意味を持つ。人選自体が、中東の「最重要同盟国」と位置付けられるイスラエルや、同国とパレスチナとの和平問題にどう向き合うかを示す指標となるためだ。

 トランプ前大統領は2017年1月の就任早々に、自身の後援者で親イスラエルのユダヤ人弁護士、デビッド・フリードマン氏を指名。トランプ氏は在任中、国際的に地位が定まっていないエルサレムをイスラエルの「首都」と認定して同地へ米大使館を移転させたり、占領地ゴラン高原へのイスラエルの主権を承認したりするなど同国寄りの姿勢をとった。フリードマン氏はイスラエル政府に強い影響力を持ち、同国とアラブ諸国との国交正常化協議の仲介などで大きな役割を果たしたとされる。

 これとは対照的に、バイデン氏は就任から4カ月近くがたつ今も駐イスラエル大使を指名しておらず、同ポストは空席のままだ。サキ大統領報道官は今月12日、指名発表までにはさらに「数週間」が必要だとの見通しを示した。

 バイデン政権のブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らは、イスラエルとの関係が極度に冷え込んだオバマ政権にも仕えたリベラル派だ。パレスチナ問題では、トランプ政権によるイスラエル偏重を修正し、将来のパレスチナ国家とイスラエルの「2国家共存」を目指す路線への回帰を進めてきた。

 一方で、中東におけるバイデン政権の最重要課題は、トランプ政権が離脱したイラン核合意への復帰で、パレスチナ問題の優先順位は高くない。大使指名が遅れている背景には、核合意に反対するイスラエルの理解を得るため、人選に慎重を期しているという事情もありそうだ。

 大使が長期にわたり不在では、外交的なメッセージが弱まることは避けられない。民主、共和両党の政権で長く中東和平担当の国務長官顧問を務めたアーロン・ミラー氏は11日、ツイッターで、「危機の際に大使が不在なのは深刻な問題だ」と指摘した。

 ブリンケン氏は13日、ハマスとイスラエルの戦闘激化を受け、アムル国務次官補代理(イスラエル・パレスチナ担当)が現地に向かっていると説明し、事態の沈静化に向けた外交努力を加速させる姿勢を示した。だが、イスラエルのネタニヤフ政権や与党の右派リクードには、占領地での入植活動などに批判的なバイデン政権への不信感が強いとされ、事務レベルでの調停は難航が予想される。

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