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習氏、国際環境悪化を警戒 加茂具樹慶応大教授 

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加茂具樹・慶応大教授
加茂具樹・慶応大教授

 5日から始まる中国の全国人民代表大会(全人代)について、慶応大の加茂具樹(かも・ともき)教授(中国政治)に聞いた。

 全人代は、2025年までの五カ年計画と35年までの長期計画を策定する。習近平指導部が国内と国際のリスクにどの様に向き合おうとしているのかを理解する重要な機会だ。

 習指導部が今、向き合っている中国社会は、1980年代以降の改革開放の真っただ中にあった社会とは違う。長く続いた高度成長は終了し、就業問題、地域間の経済格差、少子高齢化、社会保障の未整備という社会の不安定に直結する課題が山積している。習氏は「人々の充実感、幸福感、安全感の向上を満たす必要がある」という表現を使う。これは中国社会が、経済成長による物資的な豊かさの先にある生活の「質」の向上を求めるようになったことへの反応と考えてよい。

 指導部は新型コロナウイルスの押さえ込みに成功しているかもしれないが、社会を不安定に導く諸課題の解決はできていない。国内問題に起因するリスクと向き合っている。

 新型コロナ問題の深刻化は、国際政治のパワーバランスの変化を促し、中国は存在感を大きく強めた。しかし習指導部は、同時に国際環境が悪化しているとみる。先進国は経済安全保障という観点から中国を脅威と捉え、そうした懸念が日米豪印の4カ国による戦略対話の強化や英国のインド太平洋地域における行動の一因となっていると理解している。同盟国を持たない中国は、安全保障環境の悪化に警戒を強めている。

 習指導部は、国内環境の変化と国際環境の変化が生むリスクを克服するために、国内では集権的な政治を選択している。外交では主権や領土をめぐる問題について自己主張の強い行動を選択している。バイデン米政権に対して、協調路線を模索するメッセージを送りながらも、台湾の問題は「内政」だと強い姿勢を見せている。香港に対する圧力や台湾に対する行動も、そうした文脈のなかで捉えることができる。対日関係も重要な課題だ。

 今回の全人代で、習指導部の自信と同時に、リスク意識の所在とその深さを確認することができるのではないか。(聞き手 田中靖人)

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