PR

【アメリカを読む】バイデン政権、「科学重視」で脱トランプ 大物科学者を次々登用

PR

ホワイトハウスの大統領執務室に飾られた建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンの肖像画。バイデン米大統領の科学への信奉を示しているという。(ロイター)
ホワイトハウスの大統領執務室に飾られた建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンの肖像画。バイデン米大統領の科学への信奉を示しているという。(ロイター)

 バイデン米大統領が就任後、「脱トランプ」を急速に進めている。中でも新型コロナウイルス感染症や気候変動問題の対策では「科学重視」を打ち出し、大物科学者を相次いで要職に登用するなど、科学を軽視する傾向が強かったトランプ前政権の政策を一変させている。(ワシントン 住井亨介)

「信頼取り戻す」

 バイデン政権は1月21日、新型コロナ対策として新たな国家戦略を公表した。7項目からなる戦略の第一に掲げられたのが、「米国民の信頼を取り戻すこと」だった。

 トランプ前大統領は在任中、記者会見で新型コロナに対して抗マラリア薬の投与や消毒液を注射することに言及し、しばしば専門家らを困惑させ、政策に対する国民の信頼性を失わせた。

 バイデン氏は「国家戦略は政治でなく、科学に基づいたものだ」として、科学的知見に基づいて国民に正確な情報を届けると強調。トランプ前政権からの転換を鮮明に示した。

 大統領の首席医療顧問で、前政権でも新型コロナ対策チームのメンバーを務めたアンソニー・ファウチ・国立アレルギー感染症研究所長は記者会見で前政権との違いを問われ、「(トランプ氏の提案は)科学的事実に基づかず、居心地が悪かった」と振り返り、現在は「科学が声を上げることができ、解放された気分だ」と喜びをあらわにした。

 科学重視の姿勢は、新型コロナ対策だけにとどまらない。

 トランプ前政権は人類活動の影響による地球温暖化を否定し、対策予算の大幅な削減や規制撤廃を進めたが、バイデン氏は就任初日に温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を決定。気候変動問題を中心課題と位置付けて対処するよう全省庁に指示する大統領令にも署名し、主要排出国による首脳会議(サミット)を開くことを表明した。

 ハリス副大統領は「気候変動を裏付ける科学は作り話ではない。ウイルスを裏付ける科学は党派的なものではない」とし、政策の随所で科学的視点を重視していることを強調する。

 また、バイデン氏は今夏の東京五輪についても科学を持ち出して言及。「安全に開催できるかどうかは、科学に基づくべきだ」と指摘した。

執務室にフランクリン

 政権のこうした姿勢を顕著に示しているのが、名門マサチューセッツ工科大(MIT)の教授で、遺伝学者であるエリック・ランダー氏をホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)局長に指名した人事だ。

 ランダー氏は、閣僚級に格上げされた大統領科学顧問の地位にも就任。米国科学協会はAP通信に対し、格上げは「科学的な知見をすべての政策協議に反映させるという政権の意志を明確に示すものだ」と歓迎するコメントを寄せた。

 バイデン氏は他にも、MIT副学長で惑星科学者のマリア・ズーバー氏と、ノーベル化学賞受賞者のフランシス・アーノルド氏を大統領科学技術諮問委員会の共同委員長に任命。

 声明で「科学はわが政権の常に最優先であり続ける。われわれが実行することすべてが科学、事実、そして真実に基づくことを、これら世界的に有名な科学者たちが保証していくことになる」とした。

 こうしたバイデン氏の科学重視の姿勢はホワイトハウスの大統領執務室にも表れている。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、トランプ前大統領時代に飾られていた第7代大統領のアンドリュー・ジャクソンの肖像画は取り外され、「建国の父」の一人であるベンジャミン・フランクリンに掛け替えられた。

 18世紀に生きたフランクリンは、米独立宣言の起草委員となるなど米政治に大きな足跡を残した一方で、雷が電気であることを証明した実験で有名な科学者でもあった。科学を軽視した前政権からの脱却が本物かどうか、科学者たちは固唾をのんで見守っている。

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報