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米イラン「3カ月」の攻防 ロウハニ大統領の時間わずか

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イランのロウハニ大統領(AP)
イランのロウハニ大統領(AP)

 イラン核合意に基づく義務の逸脱行為を続ける同国のロウハニ政権は23日に国際原子力機関(IAEA)の核施設などへの抜き打ち査察の受け入れを停止する一方で3カ月間に限り「必要な検証・監視活動」を認める妥協をした。イランはこの間の交渉でバイデン米政権から制裁解除を引き出すことを狙っているが、両国間の隔たりは大きく、双方が歩み寄れるかは「3カ月」の攻防にかかっている。(カイロ 佐藤貴生、ワシントン 住井亨介)

■3カ月の時間稼ぎ

 2018年に核合意を離脱したトランプ米前政権はイランに対して「最大限の圧力」政策を取り、合意に基づいて解除されていた経済制裁を復活させた。

 イランのメディアによると、ロウハニ大統領は24日、制裁の早期解除を求め「そうすれば前進する道が開け、交渉が可能になる」と訴えた。IAEAとの妥協で確保した「3カ月の猶予」を浪費すべきでない-とのメッセージだ。

 イランはバイデン政権や、核合意当事国などとの多国間の対話に前向きだ。同国のアラグチ外務次官は多国間会合への参加を「検討している」と述べ、近く回答する見通し。欧州連合(EU)は米イランを含む核合意当事国の非公式会合を呼びかけており、査察をめぐる「3カ月」の妥協は、外交交渉を視野に時間稼ぎをした形だ。

 米イラン間では、双方で拘束されている自国民の解放をめぐる交渉も始まった。信頼醸成の一環とみられ、国交がない両国の交渉はスイスを介して間接的に行われている。

 しかし、米政権は制裁解除よりも、イランが核合意の逸脱行為をやめるのが先だと主張している。米国は多国間会合に出席するとしているが、イラン側が核開発を止めることが前提という側面も大きい。

■勢い増す保守強硬派

 核合意締結を主導した国際協調派のロウハニ師に残された時間は少ない。

 保守強硬派が勢いを増すイランでは6月に大統領選が予定されている。ロウハニ師は任期満了で出馬できずレームダック(死に体)化が進んでおり、5月下旬までの3カ月、膠着(こうちゃく)状態のまま推移すれば、対米批判一色で柔軟性に欠ける保守強硬派から次期大統領が選出され、米国との和解が遠のく可能性がある。

 抜き打ち査察の受け入れ停止に先立ち、ロウハニ師が率いる政権とIAEAが21日に妥協案で合意したのを受け、反米の保守強硬派が多数を占めるイラン国会は22日、同師個人を非難し、訴追を求める決議を採択。国会では昨年12月、米国が制裁を解除しなければ核開発を加速させるよう政府に義務付ける法律を成立しており、同師はこの法律に違反したとの主張だ。

 ロウハニ師には保守強硬派の攻撃をかわしつつ、欧米との間で核合意を立て直す困難な仕事が待ち受ける。エジプトの政治評論家、バセム・アリ氏は「ロウハニ師にとって非常に厳しい3カ月になる」との見方を示した。

■米、膠着打開に動くか

 バイデン政権は「外交は、イランに核兵器を得させないための最善の方法」(サキ大統領報道官)とし、トランプ前政権下で悪化した米イラン関係を対話により打開する方針に転換した。しかし、両国の立場の違いは大きく、米国が現在の膠着状態の打開に動くかは不透明だ。

 米政権は18日、EUがイランとの対話の場を設定すれば米国も参加する用意があると表明した。ブリンケン米国務長官は、イランが核合意を順守すれば「米国も同様の対応をとる」と述べた。対話の意思はあるが、イランが核合意に基づく義務を履行するかによるというメッセージを送ったものだ。

 バイデン政権が、トランプ前政権の「最大限の圧力」路線から「対話」にかじを切った背景には、前政権の政策が「イランの核開発計画を促進させ、中東地域でイランの態度を一層、攻撃的にさせた」(国務省高官)との反省がある。

 サキ氏は24日の記者会見で「より長期的で強力な枠組みを構築する」とし、イランの弾道ミサイル開発なども交渉に含める考えに言及。「欧州の誘いにイランがどう反応するか待っている」と期待をかけたが、核開発に加え弾道ミサイル開発に制限をかける路線はトランプ前政権が模索したものの頓挫しており、交渉が長期化する可能性がある。

 「対話」を重視するバイデン政権の姿勢は、イラン側に足元を見られる恐れもあり、「イランの脅しを前にしてとっている融和策ではないのか」(トランプ政権の元高官)との批判も上がる。米側にも容易に妥協できない事情がある。

■イラン核合意 2015年7月に米英仏独中露とイランの間で結ばれた合意。正式名称は包括的共同行動計画(JCPOA)。同月、国連安全保障理事会の決議で承認された。イランが15年間、兵器転用可能な高濃縮ウランを製造しないことや、遠心分離機を削減することなどの見返りに、対イラン制裁を緩和することが定められた。米国はトランプ前政権下の18年5月に離脱を表明し、その後、制裁を全面再開。イランは、制裁緩和が進まないことへの対抗措置として、段階的に合意履行を停止している。

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