バイデン政権1カ月 分断修復なお試練 コロナ・経済対策は試金石に
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【ワシントン=塩原永久】20日で就任から1カ月となるバイデン米大統領は、新型コロナウイルス危機の克服に向け、国民の融和と党派を超えた協力を呼びかけてきた。しかし、感染症対策や雇用回復を進めるために実現を急ぐ巨額経済対策について、野党・共和党の歩み寄りは得られていない。与野党の協調や分断修復を掲げるバイデン政権の試練が続いている。
「国民は分断なんてしていない。(新型コロナ制圧へ)力を合わせよう」
バイデン氏は16日、中西部ウィスコンシン州での住民との対話集会で、そう語った。ワクチン普及の財源や失業者支援策を盛り込んだ1兆9千億ドル(約200兆円)規模の経済対策を急ぐべきだと強調し、共和党に改めて協力を求めた。
対話集会は、トランプ前大統領支持者らによる連邦議会議事堂乱入事件をめぐるトランプ氏の弾劾裁判で13日、上院が無罪評決を下した直後に行われた。しかしバイデン氏は「トランプ氏の話題にはうんざりしている」と述べるにとどめ、コロナ対策などの政策遂行に傾注する姿勢を示した。
上院が弾劾裁判の実質審理を9日に始め、4日後に評決をとる形で早期終結させたのも、与野党の融和を促し、経済対策の審議を急ぎたいバイデン氏の意向に沿った動きとされる。
ただ、バイデン政権と与党・民主党が重視する経済対策について、財政悪化を懸念し、より小規模な対策を求める共和党との溝は埋まっていない。バイデン政権や議会民主党は「強硬手段」も視野に入れ始めた。
民主党が主導する上下両院は5日、同党だけで財政関連法案を通過させることを可能にする予算決議をそれぞれ可決し、与党単独で経済対策法案を通過させることに道筋をつけた。
バイデン氏が就任後、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰などを決める大統領令に相次いで署名したことには議会軽視との指摘もあり、「結束を目指すというバイデン氏の誓約を裏切っている」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と批判された。
それだけに同氏は、経済対策法案の柱となる家計への現金給付について、給付対象を狭めて支出を抑える共和党への譲歩案を容認するなど歩み寄りの姿勢もみせる。バイデン政権が共和党との合意を目指すか、単独採決の強行突破を図るかは、今後の政権運営を占う試金石になりそうだ。