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「ワクチン接種証明」めぐり議論活発 欧米で導入模索

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サッカー場での新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を視察するジョンソン英首相(左)=1月25日、ロンドン郊外(ゲッティ=共同)
サッカー場での新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を視察するジョンソン英首相(左)=1月25日、ロンドン郊外(ゲッティ=共同)

 新型コロナウイルスのワクチン接種者にデジタル証明書を発行し、自由な移動を認めるべきか否かが、各国で論議されている。「ワクチンパスポート」と呼ばれる証明で、欧州では経済正常化への切り札としてデンマークなどが導入方針を決めた。米国も検討に乗り出した。ただ、非保有者への差別につながるとの懸念も強く、対応は分かれる。(パリ 三井美奈、カイロ 佐藤貴生、ワシントン 住井亨介)

 ジョンソン英首相は15日、アフリカで入国時、黄熱病ワクチンの接種証明を求めている国があることに触れ、新型コロナでも「接種証明を求める国が出てくるだろう」と述べた。

 ワクチン接種が速いペースで進む英国では、ブレア元首相が1月末、先進7カ国(G7)議長国として国際的な証明書の基準作りをリードするよう提案。政府は当面、海外渡航で必要な場合に限って証明書発行を検討すると表明した。

 欧州ではアイスランドがすでにデジタル接種証明の運用を始め、欧州連合(EU)加盟国ではデンマークに続き、スウェーデンも今夏までの運用を目指す。海外渡航だけでなく、スポーツや文化など集客イベントでの使用を視野に入れる。

 観光に経済を依存する南欧諸国でもデジタル証明利用の動きが出てきた。

 ギリシャはイスラエルの接種証明書の保有者に対し、隔離なしで入国を認める方針を決めた。世界最速でワクチン接種が進むイスラエルは、接種を受けた人にホテルやスポーツジムなどの利用を許可する「グリーンパス」の運用を国内で21日にも始める方針だ。

 ギリシャのミツォタキス首相は「みんな疲れ切っている。旅行したい人は大勢いる」と述べ、他国とも同様の措置を広げたい考え。

 EUでは1月、ギリシャが域内の自由移動復活のため、EU共通の接種証明の発行を提案し、スペインやポルトガルも前向きな姿勢を示した。だが、「ワクチン接種が十分に広がっていない中、差別を生む制度にしてはならない」(ベルギーのウィルメス外相)との慎重論も強く、当面、医療目的限定の共通証明書の発行を目指すことになった。

 EU共通の証明書については世界の航空会社が加盟する「国際航空運送協会」(IATA)は「移動の自由を復活させるために必要」と導入を求めている。

 米国ではバイデン大統領が接種証明書の発行について関係省庁に検討を指示する大統領令に署名。旅行者のほか航空業界や出入国管理部門が高い関心を寄せている。ただ、スマートフォンの所持者しか恩恵を受けられなくなる可能性があるほか、大量のデータを扱うことからプライバシーとの兼ね合いといった課題も指摘されている。

日本も発行検討

 日本政府は国際的な議論の動向をにらみながら、新型コロナウイルスのワクチンを接種済みであることを示す証明書の発行を検討している。今後、邦人が海外渡航する際などに諸外国から接種証明の提示を求められる可能性があるためだ。ただ、国内の移動などでの利用については慎重だ。

 小林史明ワクチン担当大臣補佐官は17日夜、記者団の取材に「国によっては渡航時に(接種証明を)求められるような議論が進んでいると確認している。しっかり日本政府として対応できるように考えて準備している」と述べた。

 国内での接種証明書の利用に関しては、河野太郎ワクチン担当相は「行政が接種証明を求めるということは今のところ想定しづらい」と述べている。証明書を持っている人と持っていない人との間で差別や偏見を助長しかねないとの懸念もある。

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