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【自由が消える-香港】(4)「紅」に染まる教育現場 写真改竄、デモ歌禁止…「生徒たちに申し訳ない」

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香港・九竜地区の中学校前で12日、政治的理由で女性教師が解雇されたとして学校側に抗議する生徒たち=香港(ロイター)
香港・九竜地区の中学校前で12日、政治的理由で女性教師が解雇されたとして学校側に抗議する生徒たち=香港(ロイター)
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 今月中旬、香港の教育現場に衝撃が走った。

 九竜(クーロン)地区の公立中学(日本の中学・高校に相当)で、女性教師が9月から始まる新年度の契約を打ち切られたことが分かった。理由は、音楽のテストで反政府デモのテーマソング「香港に栄光あれ」を生徒が演奏するのを止めなかった、というものだった。

 「周りの教師たちは驚き、恐れおののいている。誰もクビになりたくないから、今後は授業で敏感な話ができなくなる。教育の自由が損なわれてしまう」

 別の中学のベテラン教師、林俊仁氏(仮名)=(46)=は顔を曇らせて自嘲気味にいう。

 「このままでは、美術の時間に黄色(反政府デモのシンボルカラー)が使えなくなるかもしれないな」

 当局による学校への締め付けがこれまでになく強まっている。昨年から続く反政府デモでは小中学の生徒約1600人、教職員約100人が逮捕された。中国側が危機感を募らせているのは間違いない。中国で審議中の香港国家安全維持法案にも、わざわざ「学校の監督・管理強化」が盛り込まれているほどだ。

 ある中学校で卒業写真を撮影したときのこと。日本の高校3年に当たる生徒たちが、5本の指と1本の指を掲げて写真に納まった。これは反政府デモのスローガンである「政府への5大要求は一つも欠くことができない」を示すポーズだ。

 香港紙によると、これに驚いた学校側が業者に写真の加工を要求。結局、5本の指を4本に減らしたり、1本の指を2本に増やしたりする改変が行われた。

 香港政府は最近、生徒が校内で政治的なスローガンを叫ぶ行為などを禁止するよう各校に要求。学校側はピリピリしているのだ。

 今後、香港国家安全維持法が施行されると、教師も国家分裂、政権転覆などの罪に問われかねない。

 「教師たちの自己規制はさらに進むだろう。生徒には申し訳ないが…」

 林氏は実は反政府デモの支持者で、前線の若者たちをひそかに支援してきた。

 「あなたは、生徒から『香港に栄光あれ』を歌いたい、と求められたらどうしますか」と聞いてみた。

 林氏はしばらく沈黙した後、「やっぱり、だめだとはいえないな」。顔をゆがめながら声を絞り出した。

 香港では今月、国歌条例が制定され、学校でも中国の国歌「義勇軍行進曲」を歌う機会が増加する。

 もともと抗日運動の歌だった中国国歌は「立ち上がれ、奴隷になることを望まぬ人々よ!」で始まる。

 「この歌詞の意味を教えることで、国歌を中国への抵抗ソングにできるかもしれない。正面からぶつからずに反抗していこうか…」

 香港国家安全維持法を迎える林氏の心は、なおも揺れている。(香港 藤本欣也)=おわり

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