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【世界の論点】トランプ米大統領のG7拡大論 戸惑いと反発

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G7延期と拡大の方針を明らかにしたトランプ米大統領 =5月30日、大統領専用機内(ロイター)
G7延期と拡大の方針を明らかにしたトランプ米大統領 =5月30日、大統領専用機内(ロイター)

 トランプ米大統領が、6月末にワシントンで予定されていた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)を延期し、オーストラリア、インド、ロシア、韓国を加えて開催したいと述べた。新型コロナウイルス禍でいっそう顕在化した中国問題について、「包囲網」を形成して協議する意図がある。しかし、唐突な方針表明にG7諸国は戸惑い、とりわけ価値観を共有しないロシアを招くことには反発が出ている。

米国 「対中包囲」へ露を引き込む

 トランプ米大統領が突然表明したG7サミットの拡大構想は、G7諸国から不支持が相次ぎ、早くも足並みの乱れを露呈している。

 トランプ氏は5月30日、G7サミットを9月に延期することを明らかにした。さらに、現行のG7の枠組みは「世界の状況を適切に反映しておらず、極めて時代遅れだ」と述べ、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を招待し、「G10またはG11」にしたい意向を表明した。

 トランプ氏が拡大構想を発表したのは、米政権が「戦略的競争相手」とみなす中国による経済・軍事分野での覇権的行動に対抗するため、G7を有効活用しようと考えたからだ。ホワイトハウスのファラー戦略広報部長は「中国に対してどう取り組んでいくかについて、伝統的同盟国を糾合して話し合うことができる」と意図を説明した。

 CNNテレビ(電子版)は5月31日、トランプ氏がG7拡大方針の中にロシアを含めたのは、「対中国」という戦略的な文脈であれば他の先進国の理解を得やすいとの判断からだと伝えた。ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島の併合を一方的に宣言し、G8から排除された経緯がある。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(5月31日付)は「トランプ氏はサミット開催国の首脳として、いかなる国の首脳もサミットに招くことができる」と指摘し、ロシアが正式参加しないまでも、招待国として加わることは十分に可能だとの見方を示した。

 同紙はその一方、「米大統領選が2カ月後に迫る中でロシアのプーチン大統領が米国に姿を現すことは、反トランプ勢力の怒りに火をつけることになる」と指摘した。米情報機関が「前回大統領選でトランプ氏を有利に導こうとロシアは選挙戦に介入した」と結論付けている事情があるためだ。

 トランプ氏はロシアをG7に復帰させたい理由について「(G7諸国が)議題にしている多くの懸案がロシア絡みだからだ」と説明している。

 しかし、G7に参加する先進諸国は「自由と人権、民主主義、法の支配、繁栄と持続可能な経済発展」といった共通の価値観を共有していると自負する。それだけに、権威主義的傾向をいっそう強めるプーチン氏をサミットに招くことには、ジョンソン英首相とカナダのトルドー首相が早くも反対を表明している。

 トランプ氏の招待を受けた豪州、インド、韓国の各国首脳は参加に前向きだ。ロシアはしかし、中国との関係を重視する立場もあって冷ややかな態度に終始している。(ワシントン 黒瀬悦成)

中国 亀裂を生む米の「単独主義」

 トランプ米大統領のG7サミット拡大構想が「対中包囲網」の構築を狙ったものであることは、中国側も重々承知している。中国紙、新京報は3日付で「トランプ氏の目標は、やはり寝ても覚めても中国だ」との見方を掲載した。

 中国側は新たな「包囲網」の枠組みを警戒しつつも、それが実際に成就するかは懐疑的に見ている。その理由として挙げているのが「米国の単独主義」だ。

 中国紙、北京晩報(電子版)は「米国の単独主義政策はG7諸国との亀裂を広げている」と指摘し、米国とドイツの関係を例にとる。6月末のサミット開催がメルケル独首相の欠席意向を受けて見送られた経緯について、同紙は「ドイツが参加を拒絶したのは、(コロナに関する)安全面を考慮しただけでなく、米国の単独主義政策への不満もあったからだ」と断定する。

 亀裂をさらに広げる要因になると見るのがロシアの存在だ。記事中で専門家は「米欧間の亀裂が絶え間なく広がっている状況下で、米国が再び企てたのがロシアを引っ張り込むことだ。これはG7諸国の不満を引き起こすだろう」と分析する。

 当のロシアの参加についても「(欧米の制裁を受ける)ロシアには西側諸国との関係を改善する現実的なニーズがあるが、ウクライナやシリア、軍備管理など露米間に存在する構造的な対立を解消するのは難しい」と見る。

 中国包囲網の形成を狙うトランプ政権に対し、中国側は「米国の孤立」という構図を強調する。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は1日付で「米国の全方位の対中圧力は次々と壁に突き当たっている」とする記事を掲載。G7の枠組み拡大や、世界保健機関(WHO)からの脱退表明が批判されているとの見方を示している。

 中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は1日の記者会見で「事実上、ある時期から米国は条約破棄や脱退の中毒となっている」と揶揄(やゆ)し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)や国連人権理事会、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を挙げた。

 トランプ政権を横目に、中国は「米抜き」の国際的枠組みの強化に力を入れる。中露主導の上海協力機構や、新興5カ国(BRICS)といった枠組みが既にあり、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国で経済圏をつくる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の推進にも意欲を見せる。香港ネットメディア「香港01」は「国際競争では同盟国が鍵だ。米国は独力では中国を有効に押さえつけられない」と指摘する。(北京 三塚聖平)

≪ポイント≫

 ・G7拡大は中国の覇権的行動への対抗策

 ・中国は「対中包囲網」の成就に懐疑的

 ・ロシアを加えることにG7諸国が反発

 ・中国は米国の「単独主義」を弱点とみる

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