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【ポトマック通信】「アメリカの壁」に思う

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カナダのケベック州ラコールにある米国との国境ゲート=18日(ロイター)
カナダのケベック州ラコールにある米国との国境ゲート=18日(ロイター)

 新型コロナウイルス危機のせいで、米ワシントンでも人に直接会っての取材や会合の場での意見交換が日に日に難しくなっている。

 その分、支局や自宅で机に向かう時間が増えたので、中学生のときに読んだ小松左京のSF小説『アメリカの壁』(1977年)を久々に開いてみた。

 ある日、米国全土が分厚い霧の「壁」に覆われ、外界との交通や連絡手段が完全に遮断される。しかし、「美しいアメリカ」を掲げて当選した大統領の下、米国民は目立った混乱や不満もなく生活を続けていく。

 ベトナム戦争などの対外関与で傷つき疲れた米国が、「すてきな孤立」によって古き良き時代に回帰し、そこから再生しようと「壁」を生み出した、といった趣旨の物語だ。

 トランプ大統領が誕生した当時、「時代を予見した内容だ」として一部で話題にもなった。しかし、世界の国々は今や、新型コロナ禍を何とか押し返そうと、各国間の往来を制限し、事実上の「鎖国」に進みつつある。

 好むと好まざるとにかかわらず、各国がどれだけ高い「壁」を作り上げることができるかが、自国民の命を守る要件となってきた。

 まさに「事実は小説よりも奇なり」の状況が生じているといえる。そして、結末は誰にも分からない。(黒瀬悦成)

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