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【環球異見】新型コロナの呼称めぐり米中の論争激化

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新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んだトランプ米大統領(中央)は記者会見で、呼称の正当性を主張。中国の反発に反論した=17日、ホワイトハウス(AP)
新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んだトランプ米大統領(中央)は記者会見で、呼称の正当性を主張。中国の反発に反論した=17日、ホワイトハウス(AP)

 新型コロナウイルスをめぐり、米中の論争が激化している。トランプ政権の高官が「武漢ウイルス」と呼んでいることに中国の官製メディアは「根源は断定されておらず、科学的根拠がない」と反発。「米政府は(国内での感染拡大の)責任を中国に押し付けている」と決めつけた。米国では、保守系のメディアは中国の主張を「全くの見当違い」と一蹴しているが、一部メディアでは中国側に同調する動きもある。

□中国 環球時報

■非難は自信の欠如を反映

 世界で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になるなかで、中国政府は外交面で反転攻勢の姿勢を鮮明にしている。とりわけ矛先が向かっているのが、中国政府の初動対応について批判を続けている米国だ。ポンペオ米国務長官が、新型コロナについて中国が発生源だと訴え続けて、意図的に「武漢ウイルス」と呼んでいることに中国メディアも強く反発している。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は9日付で、「ポンペオたちは何故(なぜ)このように急ぎ慌てて中国に責任を押し付けるのか」と題した社説を掲載した。この中で、米国内での感染者数が日増しに増えてきていると指摘し、「このような状況下で、米国の政治屋たちは国内の予防・抑制の推進に精力を集中させるのでなく、熱心に中国を非難して責任を押し付けている」と主張。その上で「これは米国が疾病の拡大を食い止めることへの自信が欠如していることを反映している」と決めつけた。

 新型コロナについては「科学的に根源を調べる作業は今に至るまで結果を見ていない」と強調。ポンペオ氏が「武漢ウイルス」といった呼び方をしていることについては「科学的には根拠がなく、道義的に無責任で偏狭なものだ」と批判の言葉を連ねた。

 米国に対しては「最も早く中国との航空便の運航を停止した国の一つだが、これ以外に何の準備をしたのか」と強い不満をにじませる。さらには、ポンペオ氏について「彼らには国を治める策がないので“対外闘争”を大いにやっている。邪道なことを自らの政治的な成功の生命線とみなしている」とこき下ろした。

 環球時報の社説からもうかがえるように、中国は新型コロナの世界的な蔓延(まんえん)について「中国の責任」を問う批判意見を退ける主張を全面的に展開している。さらに、世界への「貢献」をアピールする宣伝を、国内のみならず国外向けにも積極化させているのが現状だ。

 国営新華社通信は、11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を表明したことを受けて配信した評論記事で、「中国は全世界の疾病に対する予防・抑制の最前線を堅守し、ウイルスの“第一波”の攻撃を効果的に食い止めて、世界のために貴重な時間を勝ち取った」と自賛した。

 4日には、新華社のサイトが「世界は中国に感謝しなければならない」と題した文章を掲載して世界で波紋を呼んだ。この中で「中国は新型肺炎との戦いのために、巨大な犠牲を出し、巨大な経済コストを支払って伝染ルートを断ち切った。どの国が、このような大きな犠牲を払ったというのか」などといった主張を重ねた。

 新型コロナの流行で国内の不満も高まっており、体制を動揺させないためにも米国などを相手に強硬姿勢を強める中国側の思惑が透ける。その一方で、そういった言動に対して世界から注がれる視線を中国がどう意識しているかは実に不透明だ。(北京 三塚聖平)

□米国 ワシントン・エグザミナー

■呼称は人種問題とは無縁

  新型コロナウイルスの呼称をめぐり、トランプ米政権の一部高官が「武漢ウイルス」の名称を使っていることに、米国内では人種差別的だとする批判がある一方、発生の起源を明確にするためには有効だとする意見も出ている。

 ポンペオ米国務長官は5日の記者会見で、コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼び、その後の米CNBCテレビのインタビューでは「この感染がどこから始まったか、非常に強い確信を持っている」と述べ、中国への疑念をにじませた。

 中国側はこれに強く反発し、米国内でも同調する動きがある。共和党のポール・ゴサール下院議員がツイッターで同じ呼称を使うと、「人種差別的で、反アジアの偏見だ」(米NBCテレビ)などと批判が沸き起こった。

 一方で、「武漢ウイルス」の呼称が正当だとする主張は、過去の慣例などに沿うものだとしている。9日付の米保守系誌「ワシントン・エグザミナー」(電子版)は、「武漢ウイルスと呼ぶことが人種差別的だとか変則的だとする考えは全くの見当違いだ」とする論評を掲載した。論評は、エボラ出血熱を起こすエボラウイルス、ジカ熱のジカウイルスの例を挙げ、いずれも最初に発見された地名にちなんでいるとして、呼称が人種問題とは無縁であることを示してみせた。

 また、全米科学健康評議会のホームページに9日掲載されたサイエンスライター、アレックス・ベラゾー氏の論文は「歴史的に微生物学者は新たな疾病に場所や動物、人物の名前を付けてきた」と強調。「武漢ウイルス」の呼称を非難するテレビキャスターに対し「彼の意見だと、すべての微生物学者が人種差別主義者になる」と反論した。

 そもそも米国主要メディアは当初、武漢市の被害が深刻だったことから「武漢ウイルス」と報じていた。ワシントン・エグザミナーはそれら過去の記事を検証し、方針を変えた一部メディアの偽善をあぶり出している。

(ワシントン 住井亨介)

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