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【環球異見】成果なきCOP25 仏紙「大会議に疑問符 EU奮起を」 印紙「『死と破壊』現実を直視せよ」

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15日、COP25で大画面に映された議長国チリのシュミット環境相(ロイター)
15日、COP25で大画面に映された議長国チリのシュミット環境相(ロイター)

 地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」に黄信号がともった。協定の実施ルールづくりを目指し、スペインで行われた国連気候変動枠組み条約の第25回締約国会議(COP25)。二酸化炭素など温室効果ガスの削減目標について強い姿勢を示せず、技術支援による途上国での削減分を計上する方法も決まらなかった。積極的な温暖化対策を訴える欧州連合(EU)や島嶼(とうしょ)国と、中国やインドといった排出大国の溝は深い。

 □フランス ルモンド

 ■大会議に疑問符 EU奮起を

 フランス紙ルモンドは17日付の社説で、COP25では「著しい前進がなかった」と嘆き、約190カ国・地域が地球温暖化対策で合意を目指す会議のあり方に疑問を呈した。

 社説は「中国やインド、米国、オーストラリア、ブラジルといった大排出国は自国の流儀を崩さず、政治的重みを欠く議長国チリの提案をことごとく弱めた」と批判した。そのうえで、「大山鳴動してねずみ一匹という大会議は、目標に対して逆効果ではないのか。会議の失敗は世論の失望を招き、疑念を広げないだろうか。明確な成果がなく、どうせだめだという宿命論のワナに陥れば、まさに最悪の事態だ」と警告した。

 一方で、社説は「希望」として、EUの欧州委員会が発表した「欧州グリーンディール」を挙げた。2050年までに温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標を掲げたこの政策で「期待外れのCOP25を忘れ、将来を考えなければならない」とEUに奮起を促した。

 13日付仏経済紙レゼコーは、温暖化対策に消極的な国として「化石賞」に選ばれた日本の背景を伝えた。

 日本では「環境意識が向上しておらず、政府や経済界への世論の圧力も弱い」ことに加え、政府が途上国の石炭火力発電所の建設支援に熱心だと指摘。バングラデシュやベトナムを例にとり、背景には「中国に対抗し、外交上の影響力を強める」狙いがあると論じた。東京電力福島第1原発の事故後、日本の電力会社には石炭火力に頼らざるを得ない事情があるとも伝えた。

 ドイツ誌シュピーゲル(電子版)は15日、論説で「欧州委は、野心的な『欧州グリーンディール』を掲げたが、だれもついてこなかった」と嘆いた。大胆な目標設定に反対したブラジル、オーストラリア、米国について「いずれも右派のポピュリズム(大衆迎合主義)政治家と、石炭の擁護者に支配されている」となじった。中国も論議に消極的だったと言及し、「共産党政権が米国との貿易戦争の中、経済成長のために重工業にテコ入れしている」ことを原因に挙げた。

 COP25への失望が広がる中、欧州では来年秋に英グラスゴーで開かれるCOP26への期待が広がる。ジョンソン英首相には1月末のEU離脱後、外交手腕を発揮する舞台となる。しかも、EUとの貿易交渉妥結をめざす時期に重なる。

 英紙ガーディアン(電子版)は16日、「ジョンソン氏は貿易をめぐる攻防で、EU環境基準の切り崩しに努めるさなかに、地球規模の環境政策をまとめねばならなくなった」と皮肉を込めて論じた。そのうえで、英国は石炭依存からの脱却で取り組みが遅れ、「このままでは50年に温室効果ガスを『実質ゼロ』にする目標達成で、信頼を得られない」として政府に努力を促した。(パリ 三井美奈)

 □インド ザ・ヒンズー

 ■「死と破壊」現実を直視せよ

 インドは、中国、米国に続く世界3位の二酸化炭素(CO2)排出国だ。経済成長とともに排出量は伸び続け、2018年は約24億8千万トンと、08年と比べ約10億トン増加した。約13億人の人口を抱えるため1人当たりの排出量が小さく、国内で「排出大国」であることを深刻視する声は少ないが、一部メディアは「当事者意識の高まり」を促している。

 インド国内では自然災害が相次いでおり、しばしば気候変動の影響と結びつけて論じられる。民放CNBCTV18(電子版)は16日の記事で、ドイツ環境NGO(非政府組織)のデータを引用し、「インドは天候による経済的損失の大きさで世界2位にランクインしている」と強調した。

 インド南部ケララ州では、去年と今年の夏に大洪水が発生し、計約600人が死亡。一部の地域では、夏季の降雨不足などでカリフ作物(夏まき農産物)の主要穀物生産量が前年を下回り、農村部の所得を圧迫する。同放送は「気候変動が2050年までにインドに1兆1千億ドル(約120兆円)の損失をもたらす」と、気候変動に脆弱(ぜいじゃく)なインドの立場を強調し、先進国に対策を促した。

 英字紙ザ・ヒンズー(電子版)も16日の論評でCOP25を取り上げた。排出量をめぐるルール作りが遅々として進まなかったことについて、「インドを含む気候に脆弱な国々が直面している異常気象による損失の拡大とは対照的だ」と批判。「頻繁な暴風雨、洪水、干魃(かんばつ)による死と破壊は、団結した行動につながるはずだ」と、被害の実態を直視する重要性を強調した。

 インドはCOP25で先進国に対し、京都議定書が定めたCO2削減計画や新興国への支援を履行していないと批判したが、論評ではインドが果たすべき役割について言及した。「(国全体の)排出量が増加していることから、1人当たりの炭素排出量が少ないという状態に安心すべきではない。長期的には化石燃料からの脱却は避けられない」と、排出大国としての対策を求めた。(シンガポール 森浩)

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