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【英国の断層~総選挙2019(下)】EU離脱めぐる国民の二極化、収まらず

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6日、ロンドン中心部の劇場で行われた残留派の結束を深めるイベントに参加した残留派の有権者(板東和正撮影)
6日、ロンドン中心部の劇場で行われた残留派の結束を深めるイベントに参加した残留派の有権者(板東和正撮影)
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 「欧州連合(EU)からの離脱を必ず実現させる」

 12日の総選挙前最後の週末、ロンドン郊外のヘイバリング地区では、ジョンソン首相率いる保守党の地元候補が街頭で力強くこう訴えながら、行き交う市民らと握手を交わしていた。

 保守党が牙城とするヘイバリングは2016年の国民投票前、調査会社ユーガブが国内で最もEUに懐疑的だとした地域だ。国民投票では離脱への賛成票がロンドン首都圏で最高の約7割に上った。近くの市場で離脱の是非を問うと、「離脱に決まっている」と一様に質問をいぶかしむような顔で答えを返してきた。

 「EUからの移民を制限したいんだ」。市場で青果を販売していたジェファー・サーベイさん(58)が離脱を望む理由だ。

 移民問題は国民投票で離脱賛成が多数を占める大きな要因だった。EU域内では自由に就労先などを選べるという原則の下、英国では東欧出身の移民らが急増。域外である中東・北アフリカからの難民大量流入とテロ頻発という当時の欧州の状況も追い風に、離脱派が雇用や福祉への悪影響を訴えた結果だった。

 ベッドタウンのヘイバリングでは、住宅の家賃高騰は移民増加が原因だと信じる住民が反移民感情を高めた。サーベイさんも家族3人で暮らすアパートの家賃が倍増したといい、妻が残業を増やして切り盛りしている。

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 国民投票当時、年間約28万4千人だったEU出身の移民流入は19年3月までの1年で約20万人に減った。だが、「問題はまだ解決されていない」とサーベイさん。バーでEU残留を望む客と口論になったこともある。EU残留派の市民からは「離脱派の政治家に移民への不安を過度に植えつけられている」との声も上がるが、51・9%が離脱に賛成した国民投票の結果を踏まえ、こう反論する。

 「離脱は民主主義によって決めたこと。達成しないのは民主主義への冒涜(ぼうとく)だ」

 EU残留派はその「民主主義による決定」にあらがおうと躍起だ。

 「ジョンソン氏に過半数の議席を与えるな」

 6日夜、ロンドン中心部で残留派の市民団体が企画したイベントで、最大野党・労働党出身のブレア元首相がこう訴えると、全国から集まった200人以上の聴衆が沸いた。

 選挙戦で優勢を保つ保守党が過半数の議席を確保すれば、EUとの離脱協定案が議会で承認され、英国が来年1月末にEUを去る公算が大きくなる。英国の小選挙区制では二大政党に有利なため、市民団体は本来の支持政党にこだわらず、国民投票の再実施を主張する労働党への投票を訴える運動を展開中。離脱の是非に曖昧な労働党には批判が上がるが、離脱阻止へ背に腹はかえられないという「戦術的投票」だ。

 イベントには保守党出身ながらEU残留を望むメージャー元首相もビデオメッセージを送り、離脱を非難した。「党を超えた元首相の共演に勇気づけられた。一致団結してジョンソン氏をたたきつぶす」。参加した男性会社員(45)の言葉に熱がこもった。

 ユーガブの最新の世論調査ではEU離脱への支持40%に対し、残留支持が45%で上回る。国民投票で離脱に賛成したものの、離脱をめぐる混迷に失望して残留支持に転じた有権者もおり、残留派は勢いづく。

 「EU離脱をめぐって生じた国民の分裂が一段と進んだようにみえる」。離脱問題を研究する元保守党議員のキース・ベスト氏の意見だ。国民投票から約3年半が経過しても、国民の二極化が収まる兆しがなおみえない。(ロンドン 板東和正)

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