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ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず

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 【パリ=三井美奈】国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「世界の記憶」(世界記憶遺産)改革で、目標だった「今年内の実現」を断念した。改革案を検討する作業部会で、日本の主張に沿った新制度の大枠が固まる一方、韓国の反対で最終結論に至らなかったため。審査が凍結された慰安婦関連資料をめぐる日韓の対立が背景にある。

 作業部会が今月まとめた報告書は「改革の核心」で答えが出なかったと明記した。問題となったのは、登録申請された後、「内容が史実と異なる」などとして加盟国から異議が出た案件への対応。関係者によると、対話で決着がつかない場合、日本は「審査継続は困難」との立場を示し、多くの国が賛同した。韓国は「審査対象から除外すべきではない」と主張した。

 韓国が登録を支援する慰安婦関連資料は2017年、日本の強い反対を受けて登録判断が見送られており、韓国は新制度の導入で「同資料が審査枠から外されるのを警戒した」(外交筋)とみられている。

 作業部会は昨年、設立された。世界の記憶審査の透明化に向け、加盟国が関与する制度のあり方を検討してきた。これまでの審査は専門家で作る諮問委員会が非公開で行い、加盟国が申請案件に疑義を抱いても発言の場がなかったため、「政治利用につながる」との批判があった。作業部会の報告を基に、ユネスコ運営を担う執行委員会(58カ国で構成)で来月、改革案がまとまる予定だった。 

 改革は15年、「南京大虐殺文書」の登録をきっかけに、日本が強く主張してきた。ユネスコのアズレ事務局長も改革を支持。作業部会の論議には最多で100カ国・地域が参加するほど、関心は高かった。

 作業部会では審査について、(1)申請案件には最長90日間、加盟国の異議申立期間を設ける(2)登録は、執行委員会が最終的に承認する-などと大筋合意した。来月の執行委員会はこの報告を踏まえ、18カ国程度の小グループによる協議を継続し、来年中の改革実現を目指す方針を決める予定。だが、ユネスコ筋は「日韓が対立し続ける限り、協議は結論に至らないだろう。改革実施のめどがつかない」と懸念を強めている。

 慰安婦関連では、日米の非政府組織(NGO)が「慰安婦は性奴隷でなかった」と示す別の文書を登録申請。ユネスコは「双方の対話」の可能性を探っているが、見通しは立っていない。

 【用語解説】世界の記憶 重要な歴史文書や映像フィルムの保存や開示を促すためにユネスコが登録する事業で、1992年に開始。フランスの「人権宣言」、ドイツの「ゲーテの直筆文学作品、日記、手紙等」、日本の「御堂(みどう)関白記」など400件以上が登録されている。

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