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【三井美奈の国際情報ファイル】欧州の“主役”狙う仏 マクロン流で「独自外交」復活

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 フランスのマクロン大統領が外交の主役に名乗りをあげた。8月末、決裂必至と見られた仏ビアリッツでの先進7カ国(G7)サミットを切り抜け、欧州連合(EU)人事でも主張を通した。勢いに乗って、仏の伝統である「独自外交」復活を狙う。

■パイプ役を抜擢

 目が離せなくなったマクロン外交。成功の裏には、やはりデキる黒子がいた。

 サミットでは、ビアリッツにイランのザリフ外相を電撃招待。翌日、トランプ米大統領から「条件が整えば、イランのロウハニ大統領と会ってもよい」との発言を引き出した。緊張激化の一途だったイラン問題に「対話」の曙光(しょこう)がさした。

 黒子の筆頭は、大統領府の外交顧問、エマニュエル・ボン氏。今年5月に就任した前レバノン大使だ。7月には大統領の特使としてイランに飛び、ロウハニ師と面会。以来、イランとのパイプ役を務める。

 フランス政官界は大統領の母校、国立行政学院(ENA)卒が幅をきかせるが、ボン氏は研究者から外交官への転身組。イラン、サウジアラビアにも駐在し、中東一筋で頭角を現した。2年前、マクロン氏が大統領就任前にレバノンを訪れた際、大使として同国要人との会談をあっせんし、厚い信頼を得た。

 ボン氏の前任、フィリップ・エチエンヌ氏は、G7シェルパ(首脳補佐)としてサミットを仕切った。ENA出身で、マクロン氏がオランド前大統領のスタッフだったときから親交がある。今年6月、駐米大使に就任し、要の対米外交の責任者になった。

 自ら戦略に添ったプロをえりすぐり、エリゼ宮の先兵にする。そこに、外交大国復活にかけるマクロン氏の野心が見える。

■英独の存在感低下

 仏外交はこのところ、地盤沈下が著しかった。前任のサルコジ、オランド両大統領はドイツのメルケル首相に欧州の主役を奪われた。独仏枢軸の体面を保つため、ドイツに付いていくのに精いっぱいだった。東西冷戦時代、ドゴール大統領は米ソ二大国の間で「独自外交」を志向。ジスカールデスタン大統領は1975年、サミットを創設し、G7という枠組みを作った。

 マクロン氏が、欧州の主役になったのは、英独首脳の地盤沈下が大きい。メルケル氏は2年後の首相退任を表明してから、存在感が薄まった。ジョンソン英首相は目下、EU離脱で頭がいっぱいだ。

 トランプ氏とは、個人的な関係作りに努めた。米大統領選を来年に控え、「イランとの武力衝突は絶対に避けたい」という本心を見逃さなかった。サミット直前、2人だけの昼食会に招いた。対イラン強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら側近を遠ざけ、イランとの「取引」を訴えた。

 マクロン氏が目指す外交は何か。まず、強い欧州を築くこと。そのためには、ロシアとの関係改善は不可欠だと主張する。さらに、欧州の米国依存からの脱皮を目指す。

 その方針は8月末、サミット終了翌日の演説で示された。EUは、ロシアのウクライナ領クリミア半島併合以降、対ロシア制裁を続けているが、マクロン氏は「ロシアは欧州の一員」だと訴えた。米中二極化が進む世界で、「欧州はこのままでは消滅する」と危機感を示し、EUを独自の「極」とすることを目指した。欧州の啓蒙(けいもう)主義、人道重視の歴史に触れ、「われわれの文明は米国とは違う」と言い切った。

■EUに亀裂も

 マクロン氏があまり突っ走ると、EUに亀裂が走りかねない。北欧や東欧は、ロシアの脅威に直面し、フランスとは対露警戒感が違う。英国は、米主導の北大西洋条約機構(NATO)を重視する。

 仏国営ラジオの政治記者、フレデリック・サイス氏は「マクロン氏はドイツやベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)など方針を共有する国とともに、進もうとするだろう。EU分断は織り込み済み。西欧主導のEUは、仏の外交方針にかなう」と指摘する。

 マクロン外交は現在のところ、日本にも好都合だ。中国に対抗するインド太平洋の安全保障、北朝鮮に対する制裁維持、ロシアとの対話など、日仏は不思議なほど立場が似ている。サミットでマクロン氏は、トランプ氏と仲がよい安倍晋三首相にも頼った。イラン対話で「安倍首相、私はそれぞれに努力している」と述べ、「スタンドプレー」という批判をかわした。

 現在のフランスは、経済や人口規模では日英独を下回る中堅国。外交パワーで、国力を超えた影響力を駆使できるか。41歳の若き大統領にかかっている。(パリ支局長)

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