PR

EU強硬離脱「延期あり得ぬ」 FTA締結を最優先 ジョンソン英首相が描くシナリオ

PR

混迷の英政治 今後のシナリオは
混迷の英政治 今後のシナリオは

 ジョンソン首相は10月末に欧州連合(EU)を離脱し、EU関税同盟から完全に抜けるシナリオを描く。他国との自由貿易協定(FTA)の締結を円滑に進める狙いがある。シナリオの実現には、離脱期限の延長を主張する英議会の野党を押さえ込み、英国が一時的に関税同盟にとどまるとした離脱協定案の変更が必要不可欠だ。

議員への「脅し」

 「私が離脱延期を求めることはあり得ない」

 ジョンソン氏は2日の演説で、「合意なき離脱」阻止に向けた野党側の法案に強い警戒感を示した。離脱期限の延期をEUに要請することを義務づける同法案は、10月末の離脱を公約に掲げるジョンソン氏の「天敵」ともいえる存在だ。

 ジョンソン氏は、法案を可決させないために、あらゆる手段を講じてきた。法案の審議時間を短縮するために、9月9日の週から約1カ月後の10月13日まで議会を休会する異例の方針を決めたほか、法案に賛成する与党・保守党の議員は除名すると呼びかけた。可決した場合にも備え、解散総選挙に踏み切る「秘策」も用意した。ジョンソン氏の総選挙を示唆する今回の発言は、議席を失うことを恐れる一部の与野党の議員への「脅し」との見方もある。保守党支持者は「総選挙をちらつかせることで、法案に賛成しようとしていた議員をおじけづかせる狙いがある」と分析する。

「安全策」が障害

 ジョンソン氏は議会での攻防と並行して、メイ前首相がEUとまとめた離脱協定案のうち、アイルランドとの国境管理問題が解決されるまでは、英国が一時的にEUの関税同盟にとどまるとした「安全策」の削除を求めている。

 削除にこだわるのは、英国はEUとの関税同盟にとどまる限り、EU域外の個別の貿易協定を結ぶことができないからだ。安全策が削除できなければ米国とのFTAの締結において障害になる可能性がある。保守党党員は「英国がFTAを結べる態勢が整わないままでは、米国側も不安を感じ交渉を進めにくいだろう」とした上で「安全策を早急に取り除かなければならない」と指摘する。

米への集中回避

 一方で、ジョンソン氏は貿易交渉を米国に集中することは避けたい考えだ。米国とのFTAをめぐっては、農業や医療の分野で低価格の米国産品が押し寄せて競争にさらされることで、国内企業などの経営が苦しくなることも懸念されている。

 ジョンソン氏は、英国が締結すべき最も重要なFTAは輸出入の取引が多いEUとの考えを示している。ただ、EUとの正式なFTAの交渉は離脱後にしかできない決まりだ。ジョンソン氏は米国と並行してEUとのFTA交渉を進めるために、離脱の実現を急いでいる。(ロンドン 板東和正)

この記事を共有する

おすすめ情報