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INF条約が失効 トランプ政権、21世紀型の軍備管理体制確立目指す

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 【ワシントン=黒瀬悦成】米国と旧ソ連が東西冷戦下の1987年に締結した中距離核戦力(INF)全廃条約が米東部時間2日午前0時(日本時間2日午後1時)に失効した。2021年に期限を迎える米露の新戦略兵器削減条約(新START)も延長が危ぶまれつつあり、世界は米露だけでなく、中国も巻き込んだ21世紀型の軍備管理の枠組みを模索していくことが確実となった。国連のグテレス事務総長は1日の記者会見で、条約失効に関し「世界は、核戦争に対する計り知れぬほど貴重な歯止めを失う」と述べ、懸念を表明した。

 トランプ米政権が条約の破棄に踏み切ったのは、ロシアのプーチン政権が条約違反となる新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」を実戦配備したほか、極超音速弾頭兵器など、条約が禁止する射程500~5500キロの地上配備型ミサイル兵器の開発を積極的に進めているためだ。

 加えて、条約に加盟していない中国が、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「DF21D」の開発を進め、米軍基地のあるグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「DF26」を配備済みであることも、米政権の危機感を高めた。

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7月30日、ワシントン市内での講演で、「米国を効果的に守るには、(条約で)縛られている両手をほどかなくてはならない。米国の存亡に関わる脅威が存在する以上、妥協は許されない」と強調した。

 トランプ政権が次に進めるのは、米国も従来は条約に縛られ保有できなかったミサイル兵器の開発に着手し中露に対抗する一方、米中露による新たな核軍縮交渉入りを目指すことだ。

 米CNNテレビは1日、米国防当局者の話として、米軍が移動式車両から発射される通常弾頭搭載の新型巡航ミサイルの発射実験を数週間以内に実施する見通しだと報じた。

 一方、トランプ大統領は同日、ホワイトハウスで記者団に「ロシアは核(軍縮)条約で何らかの取り組みをしたいと考えている。私も同じだ」と述べ、交渉に前向きな姿勢を示した。

 ただ、ボルトン氏は新STARTについて「戦術核やロシアの新型運搬手段に関する取り決めがない欠陥条約だ」と断じ、「決断は下されていないが、延長はされないだろう」との見通しを明らかにした。

 トランプ政権は、米露の冷戦構造を引きずる既存の核軍縮条約を全てご破算にすることで、全ての核兵器と運搬手段を対象とした、野心的な軍備管理体制の確立を図りたい考えだ。

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