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禍根避けたトランプ氏 狙うはレイキャビクの再現

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 【ハノイ=黒瀬悦成】トランプ米大統領が今回の米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との共同合意文書発表を取りやめたのは、北朝鮮に「完全非核化」に向けた措置を確約させられないまま経済制裁緩和などの譲歩に踏み切れば、今後に大きな禍根を残すと判断したためだ。

 トランプ氏は会談後に行った記者会見で、「会談で合意ができないわけではなかった」としつつ、交渉の成果が不十分だった場合は「常に立ち去る用意がなければならない」との持論を展開。その上で、今回の会談で双方の立場は「(会談が始まった)36時間前に比べれば接近した」と述べ、成果がゼロだったわけではないと主張した。

 会談を早めに切り上げてハノイを後にしたトランプ氏の念頭にあったのは、1986年にアイスランドのレイキャビクで行われた当時のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長による米ソ軍縮交渉だったとみられる。2日間にわたった両者の交渉は一度は決裂したものの、その後ワシントンとモスクワでの2回の首脳会談を経て、中距離核戦力(INF)全廃条約として結実する。

 記者会見でトランプ氏は、盟友である人気テレビ司会者のショーン・ハニティ氏からレーガン氏との対比について聞かれると、「今日は(合意に)署名するのは適切ではなかった」とし、「はじめに合意ありき」の姿勢を排する立場を強調した。

 トランプ氏は同時に「本当は制裁を解除したくてならないのだ」と訴えつつ、それには具体的な非核化措置が必要であるとの立場を改めて表明。「金委員長もこの記者会見を(テレビで)見ているはずだ」とし、金正恩氏に改めて核放棄の必要性を訴えた。

 一方、会談が事実上の物別れに終わったのは、金正恩氏が非核化を引き換えとする経済制裁の緩和に関し「全面解除」などという過大な要望をしてくるところまでトランプ政権が読み切れていなかったことも要因の一つと考えられ、米政権としては、交渉態勢や手順の再検証も迫られそうだ。

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