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【北朝鮮危機】罵倒の裏に米への恐怖 北、建国初の最高指導者声明 強硬措置「慎重に考慮」と逃げ道

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罵倒の裏に米への恐怖 北、建国初の最高指導者声明 強硬措置「慎重に考慮」と逃げ道

北朝鮮危機更新
声明を発表する金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が22日配信(ロイター=共同) 1/2枚

 【ソウル=名村隆寛】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が21日に自ら発表したトランプ米大統領を非難する声明からは、「北朝鮮の完全破壊」に言及したトランプ氏の国連演説を、金正恩氏が極めて敏感に受け止めている様子がうかがえる。一方で「史上最高の超強硬対応措置の断行」を「慎重に考慮する」とし、米国との軍事衝突は避けたいという本音ものぞく。

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 トランプ氏を呼び捨てにした金正恩氏は「狂態」「火遊びを好むならず者」「ごろつき」「老いぼれ」などと罵詈(ばり)雑言を繰り返した。これらの悪罵(あくば)は、北朝鮮メディアが日常的に使っており、珍しくない。だが、北朝鮮にとって重大なのは、最高指導者が直々に発し、前例もないという点だ。

 米大統領から先例のない警告を受けた金正恩氏としては、国連安保理制裁も受け、自ら反論するしかないまでに追い込まれているのかもしれない。

 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、金正恩氏の「超強硬対応措置」について太平洋上での水爆実験の可能性を語った。方法は不明だが、弾道ミサイルに搭載し発射すれば、実験どころではなく核攻撃も同然だ。また、船舶を利用しての実験は事前に探知され、実現は難しい。

 トランプ氏の発言に激怒し挑発した金正恩氏だが、「慎重に考慮」という言葉から米国を恐れてもいるようだ。北朝鮮は8月9日に中長距離弾道ミサイル「火星12」による米領グアム周辺への包囲射撃の作戦案を発表した際も「慎重に検討している」と猶予つきで警告。現在、グアム包囲射撃作戦は遂行されていない。

 北朝鮮は朝鮮戦争(1950~53年)で、米軍を主流とする国連軍に平壌(ピョンヤン)を壊滅状態にされた。平壌が故郷で、当時一番乗りした韓国軍の白善●(=火へんに華)(ペク・ソニョプ)元将軍は「かつての姿の跡形もなかった」とその惨状を語っている。金正恩氏には、祖父の金日成(イルソン)主席から3代引き継ぐトラウマであろう。

 さらに金正恩氏は、米軍の攻撃によるイラクのフセイン体制崩壊を知っている。言葉の上での恫喝(どうかつ)やミサイル発射は繰り返せても、米国に軍事行動を起こさせるまでの思い切った行動には踏み切れない。北朝鮮では米軍への恐怖感は生き続けているのだ。

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  • 水爆のモデルの前に立つ金正恩・朝鮮労働党委員長の映像を見るソウル市民=22日、韓国のソウル(AP)